事の真相
奈良県某所。
「ほ~れほれ…よし!!捕まえた!!」
立派な白いひげをたくわえた、割りと大柄の老人は、鹿せんべいを餌に寄ってきた鹿の首ねっこを捕まえた。鹿は逃げようと必死で暴れている。
「ほれ、人が来る前に急いでずらかるんじゃ!!」
と、大柄の老人はその様子を見ていた青年に言う。
新人サンタクロースである青年は聞いた。
「これじゃ、まるで泥棒ですが大丈夫なんですか?」
「なに、ちょっと拝借するだけじゃよ。」
彼らのしている事は完全に鹿泥棒であったが、そんな事は気にしない。
「しかし意外でした。ソリを引くのはトナカイとばかり思っていましたが、鹿が引くんですね。」
「面白い事を言う奴じゃな。似てれば何だって良いんじゃよ。いいか?例えば、アイドルだって陰では彼氏や彼女を作るが、そんな事はファンには言わない。それと一緒じゃ。」
ベテランサンタクロースの例えが正しかったのか、いまいち新人サンタクロースには分からなかったが、事の真相とは意外とそんなもんなのかもしれないなと思った。