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親友と自らの命、どちらが重いですか?

作者: Lunaの光

消えることのない感情。

特定の人物に向けられる特別な感情であり、

そして、その人物は何度も変わる、そんなものもいれば

ずっと同じ…、そんなものもいる。



愛も、夢も、希望も、

持っているだけでは何の役にも立たない。




ましてや、醜い愛を知らぬ純粋な子供が

消えることのない感情を抱き

その感情のまま行動してしまえば

幻滅だってしてしまうのである。






「…んで、何なのよ、話って。」



体育館裏、あたしは呼び出された。

あたしは、一度もこいつの顔を見たことない。

名札の色を見ると、後輩であることが分かった。






「…っ、ず、ずっと…好きでした!

運動会で……、は、走る先輩を…み、みみ、見てから…!

こ、ここ、こんな僕でよければ…、」



“付き合ってください。”





だなんて。





ある程度『あいつ』から聞いてはいたけれど、

本当に男って、女に幻想を抱くものだったなんて。


醜く言えば、『こいつ』…、そう、

あたしの目の前にいる男子は、

少なからずあたしを、夜のおかずにしていたのかもしれない。





「…ごめんなさい、あたしとあなたでは釣り合わないわ。

あなたは、純粋すぎるから…。」




まるであたしがあたしではないような、

そんな言葉を並べる。

何度この言葉を言ったことだろう、だなんて。

あたし自身に吐き気がする。






「や、やっぱり僕じゃ駄目ですか…。

『あいつ』…、いや、けんと先輩じゃなきゃ…。」




『けんと』。

あたしの幼馴染であり、かつ一番の親友。

勘違いされちゃ困るのよ。





「…ただの幼馴染よ、深く考えないで?

じゃあ…、あたしは用事があるから帰るわ。

…気をつけてね?」





あぁもう、こんな台詞、あたしらしくない。

早く帰りたいのに…。


後輩が帰るまであたしは、閉まっているはずの校舎にいることにした。

いつも、二階の左から五番目の窓は鍵が壊れているから、

ずっとあいている。




隣接して生えている木をよじのぼり

窓を開いて、中へ入る。








「……また告白されたのか、りゆ。」



「まぁね。それよりどうしたの?

あんたがここにいるなんて、珍しいじゃない。

帰宅部部長。」



そんなもんあるか、と無表情で『あいつ』が答える。





「で…、けんと。

あんたもでしょ?

後輩と、同級生のオンナノコに…。」



あたしは笑い声をあげる。




「何だ、俺が告白されるのがおかしいのか?

それだったらお前もおかしいことになるぞ。」




まぁ、そういうことになるわね。

そうあたしは返事した。


「校舎に二人きり、だなんて。

また勘違いされそうねぇ…、噂好きのあいつらに。」




ふふふ、と笑いながら言う。





「言わせておけばいい。

それに付き合うことは一生無いしな。」



「それもそうね。

あたし達、お互いの本性知っちゃってるし…。」






本性。




あたし達は、普通の学生。

だけれど、普通ではない。





「あんた、どうすんの?

このままでいいのなら…、

歪みのものが生み出した…、

歪んだ“物”になっちゃうわよ?」



りゆの顔が真剣になる。




「…考えてる。

俺の…、一番大切なものを捨てるなんて、

そう簡単にできないだろ?」




その後に「この世にとっては一番いらないものだけど」と、付け足す。



わかってるわよ。

あんたの、母親の唯一の思い出のもの、

なんでしょ?



でも、あんたの母親は

「時の歪み」で発生した、

歪んだ人間なのよ。





「…わかってるよ、時間がないことくらい。

自分も、歪んだ人間であること、くらい、言わなくて、も…っ。」




いつもは無愛想な顔が、哀しそうな顔になる。



でもけんと、あんたのその哀しい顔が

あたしは大嫌いなのよ…。





「…唯一の肉親の証、とでも言いたいの?」


あたしは壁にもたれる。

気持ちが、出てはいけないから。




「おま…え、人事だと思って…。」




わかってる、人事だから言える。

もし自分も同じ目にあっていれば

同じことは言えない。




「歪みで記憶も変えて…幼馴染ってことにしたけど…

でもあんた…」






「おぉ〜?カップルのらぶらぶな会話を邪魔してしまいましたかぁ〜?」





この声は。

あたしもけんとも身構える。



時の歪みの使い。




簡単に言うと、時の歪みの中にはふたつの王国があって、



「王子、結論は出ましたかぁ〜?」



けんとは、片方の国王家の血をひいている。

でも、歪んだ人間じゃない。




王女…、けんとの母親が、

こちらの人間と恋に落ち、子を産んだ。



生んだ子供が、歪んだ人間ではなく、

普通の人間になってしまった。

そして母親は、けんとにあるものを託した…んだけど



そのものをめぐって、大変なこ…




「余所見はいけませんよぉ?お嬢様!」





使いは俗に言う「魔法」というものを使ってくる。

なぜあたしがお嬢様と呼ばれているかは、




「王子と仲良くしてくれているんですもの…、

それなりの身分はさしあげます。」




けんとと仲良くしている、それだけ。





「…、さぁ王子。

結論は今日までですよ?」



廊下についている時計は12時をさしている。


そう、ここが『歪んだ空間』になった証拠。

時計が、『今』を認識できていないせいでおこる…らしい。

詳しいことは王子…こと、けんとと使いしかしらない。

たった今、この次元で地球にいる人間では…。




「りゆ、俺…!」




ずごおおおおおん!




けんとの声は騒音によってかき消された。




「王子、はやく結論を出すのです!」


校舎を壊す…幻覚を見せる。

音ももちろん嘘のもので。






「…答え、出すからよく聞け!」




音が鳴り止むと、けんとは叫んだ。




「りゆ…、俺…、こっちにいて楽しかった!

特にお前が…、一緒にいて一番楽しかった!

ありがとうな!」




ちょっと…、待ちなさいよ!




「え、あんたどういう…「王子は歪んだ王国に来るのですね!」




けんとは深く頷く。




あんた、何よ…!

約束したじゃない、

「ずっと幼馴染、そして親友」って!

記憶だけ変えた、って言っても、

約束は約束よ!





歪んだ王国?

ふざけんな!






「…返しなさいよ。」




「え?」





「返しなさいっつってんでしょ!けんとを!!

あんた…、あたしを甘く見てたら承知しないからね!」





そう言った瞬間、あたしはあたしじゃないみたいな動きをした。

壁にくっついて、手から訳わかんない光線だして…、



ってこれじゃまるで、あたしも歪んだ人間みたいじゃない!






「歪んだ空間の中で、そちらの人間は

異常なまでに歪んだ人間と酷似するようです…フフ!

研究資料がまた増えましたよ…!」




「うるさい、うるさい!

さっさと返しなさい!


あたしの、あたしの…!!!!」





初めて出来た、友人を………。








気づくと、あたしとけんとは

普通の校舎に立っていて。




時計は『午後5時34分』をさしている。






「何で…、俺ここに…!?

…りゆ?」




「わ、わかんないけど…、すごく足と頭が痛い…かな?なんて…。」





「…また、よろしくな?」



「泣いてる?」



「誰が泣くか!」










―――けんとを、歪んだあの世界に、一生返さない!




―――何故そこまで『王子』に執着する?



―――王子じゃない!けんとって名前があるのよ!









―――もし、返したくないのならば、

    お前の命を

      コチラの世界に寄付しなさい。

        それで王子…、いえ、けんと様はあきらめます…。












   あたしは命より、

     奇麗な思い出のほうが


   大事なのよ…。





親友と、自らの命と…。

はかりではかれば、どちらも釣り合う…ことなく、

はかりは壊れ、どちらも同じ速さで地面に落ちる。

どちらも、それほど丈夫である。



しかし、ふとしたことですべて粉々に砕ける…。




砕けた後は、復元は不可能なのだ…。

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