6話 日々是好日ですが?
※閲覧注意:食事中の閲覧には不向きな描写があります。
21世紀前半の日本では、インターネットに転生物語が氾濫していた。私も読んだし、お気に入りもあった。
もしも、この私の独り言を読む人が居るとすれば、きっと退屈して閉じてしまうに違いない。
当の私は必死であたふたしているけれど、毎日の暮らしは至って平和だもの。
これって客観的に見ると、事件でも冒険でも喜劇でも悲劇でもないよね。
読者が期待するドキドキハラハラ・うきうきわくわく・クスクスゲラゲラ・うるうるぽろぽろ。これらにプラスして、ほのぼのモフモフの要素。人の好みによっては、ぞくぞくゾワゾワだって有りだろうし、きゃっきゃっウフフの方が良いかもしれない。
こういった事柄が何にも起こらないなんて、さぞかし読者側は『つまんない』であろう。
でも、小説の中でならばともかく、現実で経験するのは大変だよ。
なので、私は退屈人生万歳!その他大勢の背景キャラで結構!連載が打ち切りになるほど普通の生活で上等!ですとも。
もっとも、「生まれ変わった時点で、もう『平凡』じゃないだろ!」ってツッコミ入れられたら、そこでお仕舞いなんだけれど。
でもね、地味で起伏のない生活でも、本人なりに日夜努力してるってことは力説するよ。
ちなみに、いまは庭を散歩中。隅々までよく手入れされて美しいけれど、とっても残念なことに、屋敷の外の景色は空しか見えない。
何故かと説明すれば、ここは中華風な家屋に四方を囲まれた中庭なのである。我が家はあたかも城壁で護りを固めたような建築様式で、外と内を完全に隔ててしまっている。
だから、この屋敷が郊外に建っているのか、それとも町中に建っているのかも判らない。強いて挙げれば、我が家から見える範囲で高層建築の姿がない事から察して、ここは大都市ではないと言えるくらい。
さて、こうやって私が一生懸命に歩いている後ろでは、子守の女の子が見守ってくれている。まだよちよち歩きの幼児なもので、少女には体力の要らない散歩でも私には結構な運動量になる。
季節は秋で、日に日に涼しくなってゆき、体力作りには良い午後だ。
しっかりと足腰を鍛えて、一日も早く『おまる』を返上したい。当面の目標は、『一人っきりのトイレ空間を確保すること』である。
そう、是非ともプライベートな時間を獲得したいのです。
まあ、前世で本を読んだことがあったから『ニーハオトイレ』のことは知っていたのだけれど、本当に中国人って気にしないんだね。
実地体験は、衝撃でした。
日本人の意識が染み付いてる身には慣れないし、凄く凄く恥ずかしい…。
とっさに(もうお嫁に行けない!)って思っちゃったもの。
という訳で、頑張ります!頑張らざるをえません…。
注)ニーハオトイレ:中国のトイレはドアの無い場合が多い。また、間仕切りさえ存在しない完全オープンタイプで、四角い穴や長い溝だけが存在するというものも多く、排泄中の姿が他の利用者に丸見えになる。
しかし、中国では、古来、排泄中の姿を憚り他人を遮断することはなく、むしろトイレは住民同士がお喋りをする一種のコミュニティの場所と見なされていた。
さらに付け加えておくと、自分の住居にトイレの設備がない場合などは、他人も居合わせる室内で馬桶を使用することも普通のことであった。
2013.6.6