4話 あんた私のなんなのさ?
家族に物凄い美形がいて、悩んでいます。
いえ、彼に恋してる訳ではないよ。でも、血縁関係というか、人間関係というか、相関図が解らない。
彼は十六、七歳くらいの人目を惹く少年なのだけれど、いったい私とはどんな関係なのだろう。兄妹なのか、従兄妹なのか、叔父姪なのか、それとも実は赤の他人なのか、いま一つハッキリとしないのだ。
少年への呼びかけも、人それぞれに違う。私の父親は「ダーラン」と呼ぶし、母親は「ウェンシォン」と声をかける。それ以外の人々は、おのおの思い思いに呼んでいるようである。ちなみに、私自身は「グーグ」と呼んでいるが、肝心の言葉の意味は知らないというお粗末な状態だ。
少年の方では、私のことを「メイメイ」と呼ぶ。これは、たぶん妹妹の綴りで『いもうと』という意味だ。私の前世から持ち越した数少ない中国語の知識の中に、この単語が含まれている。だから、当初は彼と私は兄妹なのだろうと思っていた。
私の母親が少年に対して何となくピリピリしているのも、彼女の年齢的に考えて、彼は継子に違いないからと早合点していたのだ。なにしろ若い母親に比べ、父親は三十代前半くらいの年齢に見えるので、彼の最初の結婚が早かったのだろうと想像したのである。
ところが、私が「爸爸」と呼んでいる父親のことを、彼は「ジゥジゥ」と呼ぶ。もし『爸爸』が赤ちゃん言葉というのでない限り、兄妹で父親の呼び方が全然違うのは変だ。
それで、次の推理では父親の弟か、甥なのかもしれないという答えになった。
しかし、彼は並外れた美形なうえ、私の両親とはちっとも似ていない。もしかして、本当は他人で居候なのではないか、という疑念がむくむくと頭をもたげる。
そんな次第で顔を合わせると、ついつい気になって少年を見てしまう。
でも、どうしてか彼の表情が乏しくて、気分の良し悪しすら窺いしれない。せっかく造作が美しい顔をしているのに、何だか勿体ないと思う。
私があんまり凝視するので、とうとう彼に気付かれて、お互いの目が合った。
とっさに笑顔を浮かべてお茶を濁したのは、前生の日本人気質のなごりに違いない。
『和を以て貴しとなす』
別に敵意はありませんからね!
当の少年はちょっと驚いたような間をおいてから、わずかに口角を上げた。有るか無きかの笑みだけれど、さっきまでのポーカーフェースよりはずっと好い。
うん、ほのぼの。ほんわかムードだよ。
欲を言えば、あなたが『誰』だか分かれば申し分ないのだけれど。
まあ、この雰囲気を台無しにしてまで焦らなくても良いかな…。
2013.6.4UP
2013.6.9サブタイトルを変更しましたm(_ _)m