ShoTa's 聞きたい秘密
谷村が俺を呼んだ時、ドキッとした。桜田がいたから。
谷村が気を利かせて席を立ってくれたのは有り難かった。桜田は、曲の予約を入れるとまたメロンソーダを飲んだ。
「俺、飲み物取ってこようか」
彼女のグラスのメロンソーダが少なくなっている。ドリンクバー制なので、お代わり自由だ。
「ううん。私行ってきます」
桜田は席を立った。
「え、お、俺もっ」
そうして2人で部屋を出た。――会話が続かない。
すると彼女は言った。
「あの……」
えらく小さな声だ。
「ん?」
「昨日、手紙ありがと。なんか、柏木くんに勘違いされやすいのかな。私、柏木くんに怒った事なんてないっていうか……」
桜田は、俺の目をみて笑った。
「だから……もう謝らないで」
心臓が潰れるんじゃないかと思った。
桜田の笑顔が可愛すぎて。心が綺麗すぎて。
「――ののかちゃん」
そう呼んだのは俺では無かった。
「愛内」
「神那ちゃん」
「こんな所にいたの。探したよ! ののかちゃんの曲、もうすぐだから、早く戻った方がいいよ」
にっこり笑いかけられて、桜田は頷いた。
「わざわざありがとう」
桜田は部屋へ戻っていったけど、
「柏木くん」
愛内は俺の前に立った。
「ちょっと話があるの」
彼女は、少し傷付いた目をして俺を見上げた。
「話? どうした?」
「それがね……言い難いんだけど……」
「柏木! お前どこ行ってたんだよ」
同じクラスの黒田が肩をくんで小さな声で話した。
「桜田が歌ってたぜ、恋のうたを! 超上手かった! 惚れそうだったあ」
その言葉に顔が紅くなる。
「……冗談言うな」
「あははっ! 冗談に決まってる。それにしてもお前何処行ってたんだよ」
「別に、飲み物取りに行ってたんだよ」
そう、ただそれだけなら良かったのに。俺は、楽しそうに笑う桜田を盗み見た。
愛内は言ってた。
〈ののかちゃんって、年上の男性と付き合ってるっぽいね。私、この前見ちゃった。……柏木くんも、気を付けて。あの子、二股かけてるみたいなの。可愛い子だとは思ってたけど……まさかそんな子だとは、ね。〉
別に信じた訳じゃ無かった。
でも、少し寂しかった。




