表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/13

NoNoKa's 告白

「ののか、打ち上げくるんだ」

 友里は言った。

「意外だなあ。ののかって結構、わいわいするの苦手でしょ。なんていうか、引きこもり?」

「ひどいなあ。私だって、行きたいもん」

 さっきの柏木くんとの手紙の事は言ってない。私が柏木くんを好きだって事も言ってないから。早く打ち明けたいけど、恥ずかしい。でも、言わなくちゃ。友達なんだから。

「あ、あのね! 友里、由乃ちゃん」

 ん? と二人が見つめる。

「お話がありまして……」

 真っ赤になった顔を両手で挟んで冷ます。

「あらあらあら。ののかのお話しって何かしら。なんでも言いな」

 由乃ちゃんは、なにか面白いものを見つけたように、にやっと笑った。私は意を決して口を開いた。

 柏木くんに片思い中です、と。

 すると、二人はしばらく何も言わず、唖然としていた。

「ののか……由乃ちゃんと私が、気づいてないと、思ってたの」と。

 その言葉に、今度は私が唖然とした。

「知ってたの?」

「大丈夫、柏木の事、否定しないよ。ののかと柏木、いいと思う。私、応援するよ」

 由乃ちゃんは言った。

「打ち明けてくれて、ありがとう」

 二人は、にっこり微笑んだ。




 放課後になり、柏木くんと目を合わせる事も言葉を交わす事もなく、帰路についた。

 明日は打ち上げ。休日も彼に会えるのかと思うと、わくわくするし、ドキドキもした。

 ――お話、できるといいな。

「――ののかちゃん」

「あ、愛内さん」

 校門を出た所で、後ろから声をかけられた。

「やだ。神那って呼んで」

「神那、ちゃん?」

「うん、ありがと」

 そう言うと愛内さんは、私の横を歩き出した。

「あ、神那ちゃんも家こっちなの?」

「まあね」

 曖昧に答えて、にこっと笑った。

「ねえ、明日打ち上げ行くの?」

「行くよ。カラオケらしいね」

 カラオケは好きだ。歌うのが好きだけど、盛り上がるわけじゃない。だから、明日の打ち上げでは歌うつもりじゃなかった。

「楽しみだねー! 柏木くんも何か歌うのかな」

 声を小さくして愛内さんは言った。恋する女のそれだ。

「……神那ちゃんと柏木くんは恋人同士なの?」

 すると、愛内さんは少し頬を染めて曖昧に首を傾げた。

「……そうね」

 ――ああ。

 やっぱり、二人はお似合いすぎる。横顔をそっと盗み見る。大きな目と長い睫毛。目の上でぱっちり切りそろえられた前髪に、綺麗な長い髪。

「――あ、家ここだから」

 私は、いつの間にか辿り着いた家の前で手を振った。

「そっか。じゃあ、また明日ね!」

 愛内さんも手を振って、さっき来た道を戻っていく。確か、愛内さんも柏木くんや由乃ちゃんと同じ中学。

 だとしたら、家は逆方向なんじゃ……。

 頭にハテナマークが浮かんだが、着替えている間に忘れてしまった。

 ――明日、楽しみだな。




 楽しみにしていた日に限って、風のごとく過ぎて行ってしまう。

 私は、メロンソーダをちびちびと飲みながらみんなの歌を聴いていた。みんな、楽しそう。

 柏木くんも、楽しそうにみんなに囲まれて笑っていた。

「ののか」

 由乃ちゃんが手招きした。

 そばに寄ると「柏木」と柏木くんも呼んで隣に座るように促した。

「よよよ、由乃ちゃん?」

「まあまあ、座んな。あたしはちょっと、ト・イ・レ」

「由乃ちゃん!」

「谷村!」

 私達を無視して彼女は部屋を出て行った。

「……歌わないの?」

 柏木くんは、私の方を見ないで言った。

「うん。私が歌ったら盛り上がらないので」

 すると柏木くんはデンモクを私に渡した。

「歌って。気にしないでいいから。き、聴かせてほしい」

 彼は、やっぱり向こうを向いていたけれど、きっと真っ赤な顔をしてると思った。そんな彼に、私は大好きなバラードナンバーを入れた。


 柏木くんの前で、歌うとは思わなかった。だって、この歌そのまま、私の気持ちなんだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ