NoNoKa&ShoTa 手をつないで
「桜田! こっち」
柏木君は、私の姿を認めて手を振った。私も小さく手を振り返す。
「ごめんね。遅れちゃって」
私は、頭を下げた。すると柏木君は私の頭の上に、ぽんっと手をやってから
「たったの十分。なんてことないよ。それに、桜田を待ってるんだと思ったら、苦じゃなかった」
行こう、と左手を差し出される。私は戸惑いながら指先を少しだけ握った私に柏木君が笑う。
「違うだろ。こう」
そういって、指と指を絡ませる。
「冷たい手。大丈夫? 寒くない?」
柏木君が腰をかがめて覗き込んでくる。
「うん。大丈夫」
本当は、冷たいのは手だけで、体は恥ずかしくて暑いくらいだった。
「あ、れ。柏木と桜田じゃん。なんだよ、付き合ってんの?」
クラスの男子に見つかって、ひやかされる。
「でもまあ、学校の前で、あんな修羅場を見せつけられたらなあ。そういえば、愛内神那、柏木が桜田連れてどっか行ったとき泣いてたけど大丈夫だったかな」
その言葉に、柏木君を盗み見る。
思ったとおり、少し苦い顔をしていた。愛内さん、柏木君のこと好きだったみたいだし。柏木君も、愛内さんとはすごく仲良かったみたいだし、どうなんだろう?
「ねえ、柏木君」
私は言った。
「愛内さん、来てないのかな」
え、と言葉を失った彼に、握った手の力を強めた。
「そういえば、私たちが……その、付き合ったこと……まだ言ってないんじゃないかな、と思って」
「教えたほうがいいと思ってる?」
柏木君は言った。
「思ってる、よ。だって、多分だけど……愛内さん、柏木君のこと好きだったんだと思うの。好きな人に、隠し事されるのって、つらいよ? 他人伝えに、そういう大切なこと聞かされるのって、もっとつらいんだよ。だから、せめて、柏木君の口から……」
柏木君の背のずっと向こうに、愛内さんの姿を見つけた。
私はすっと手を離して、柏木君の背中を押した。
「大好き、だよ」
柏木君は、頷いて、彼女の元へ行った。
「愛内。来てたんだ」
俺は出来るだけ明るく言った。
「来てたよ。柏木君に会えるかも、と思ったから」
そういって、愛内はため息をついた。
「正直、あの時柏木君が、ののかちゃんのところに行くなんて思ってなかったよ。びっくり。でも、柏木君は、そうしたかったんでしょ。今日も彼女と一緒に来てるみたいだし、上手く行ったんだ。良かったね」
「そのことなんだ」
俺は、まっすぐ愛内を見た。
「俺、桜田と付き合うことになったから。それを、愛内に伝えたくて」
「うん。ありがとう。柏木君の口から聞けて、吹っ切れたような気がする。彼女のこと、大好きなんでしょ」
俺は頷いた。
「大好き、だよ」
そういうと愛内は、ふっと笑った。
「はいはい。ごちそうさま。もう行って良いよ。ごめんね、迷惑かけて」
彼女は俺の背中を押した。
愛内のその言葉に、俺は振り返る。
「俺、愛内のことも、気持ちも迷惑だったなんて思ってないから」
それだけ言って、歩き出した。
「そんなこというから、好きになっちゃったのよ」
と、そんな声が背中から聞こえてきたような気がした。
「よかった。愛内さん、笑ってた」
私は、柏木君に甘酒を渡した。
「ありがとう。桜田」
え? と聞き返すと柏木君は笑った。
「好きになってくれて、ありがとう。ずっと、大切にする」
その言葉に、私は顔が熱くなる。
「だから、ずっと一緒にいような」
空いた手をつないで、力をこめた。
「柏木君、大好き」と。
ありがとうございました。
かなり不定期&意味不明な点もありますでしょうが、初作品なので、お許しください。
他の作品は、もう少し良くなっていると思うので、ぜひお楽しみください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
読みました、だけでも、感想に残していってくださると嬉しいです。
本当にありがとうございました!




