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あなたの打ち込んできたものはなんですか?  作者: 共作 群青の海 シエリ
第1章 相撲少年
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第8話

親方はお茶を一口飲み、和人の目を見つめながらゆっくりと話し始めた。


「相撲取りにとって必要なのは、もちろん体力もだが何より精神力だ。土俵の上では相手の動きや自分の技だけでなく、いかに冷静に、そして強い心を持ち続けられるかが勝敗を分けることが多い。心が折れそうなときでも立ち上がり続ける強さが大切だ」


親方の重みのある言葉に和人も母も深く頷きながら聞き入っていた。それは和人も日々感じていることだった。土俵の上でいかに冷静に判断できるかというのは本当に難しい。


「和人くん、全国大会の取組で君はよく冷静に判断ができていたね。素晴らしかった」

「っ…まだまだです…」


これまで努力してきたことを認められたようで、和人は胸が熱くなった。


その時玄関の扉が開き、父親が帰宅した。


「ただいまー」


親方の話に集中していた一同がふっと視線を玄関の方に向ける。和人の父親が戸口に立ち、親方の大きさに驚いていた。


「お邪魔しております。東京から参りました相撲の潮見と申します」


親方は立ち上がり、深々と頭を下げた。


和人の父は慌てて返答した。


「あっ!はじめまして。こちらこそどうもお世話になります!」


父親は仕事帰りの疲れを忘れ、スーツのまま少し緊張した様子で親方の向かいにあるソファに腰を下ろした。汗を拭う間もなく、親方が差し出した名刺を受け取ると深々と頭を下げた。


親方は改めて和人の全国大会での活躍を称賛した。


「和人くんは中学生の大会では本当に素晴らしい取組を見せてくれました。私も何度か取組を拝見しましたが、あの冷静さ、そして技の冴えは大したものです」


父親は照れながらも親方の言葉に感謝の意を伝えた。


「いやぁ、そう言っていただけるなんて…和人も頑張ってましたが、まさか親方にそこまで評価していただけるとは。ありがとうございます」


ひとしきり話が落ち着いた後、親方はテーブルに手を置きやや真剣な表情に変わった。


「さて、今日はその和人くんのこれからについてお話をさせていただきたく思っています」


部屋の空気が張り詰めた。親方の重みのある声が家の中に響く。


「和人くんは相撲の素晴らしい素質を持っています」


父親はその言葉に驚き、思わず声を上げた。


「あっ…ありがとうございます。いやぁ…和人、すごいなぁ…」

「中学卒業後は、ぜひ東京のうちの部屋で私に指導させていただけないでしょうか」


親方は続けて、和人に期待を寄せると同時に相撲部屋での厳しい現実についても真摯に話した。


「もちろん厳しい環境になるでしょう。相撲部屋というのは特殊な場所です。和人くんは体力も精神力も鍛えられるでしょうが、その分ご両親やご家族の不安も大きいと思います」


親方の言葉は和人にとっても家族にとっても、これからの道がいかに厳しいかを改めて感じさせた。

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