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あなたの打ち込んできたものはなんですか?  作者: 共作 群青の海 シエリ
第8章 関取への大一番①
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第42話

秋場所14日目の15時、潮見部屋の客間では若手力士たちとおかみさんがテレビの前に静かに集まっていた。ふだんはざわつく時間帯も今日は違う。


和人はこれまで3勝2敗の星、今日は勝ち越しをかけて十両の取組に上がって出場する。勝てば新十両が見えてくる。誰もがその意味を知っていた。


「もうそろそろ始まる時間ね」

おかみさんはテレビのリモコンを手に取り、落ち着いた声で言った。緊張の面持ちの若手力士たちが座布団に腰を下ろし、画面を見つめる。


その頃、プロヴァンスでも柚や椿、そして翠と樹、和人の姉の美音、菜月ちゃん、清志と常連客たちも一緒にテレビ画面を見つめていた。店内は応援の空気で温かく満ちている。


「和人くん、いよいよだね…」

柚の言葉に、椿が頷いた。

「今場所5勝2敗なら、関取の夢が現実になるんだよね。なんか、信じられない…」

「勝ってほしいな…和人くん」

柚のその小さな呟きに、翠が明るく返した。

「私たちの応援が届けば、きっと大丈夫!」


一方、商店街の八百屋では、池中さんがラジオのボリュームを少し上げながら野菜を並べていた。

「さあ、今から佐藤の取組だぞ!」

魚屋の菊田さんが軽トラックのラジオ越しに声を張る。

「白虎王とだって?そりゃあすごい勝負になるぞ!」

野菜と魚と商売の手を止めず、それでも耳と心はラジオの実況に傾いている。


また、まさに秋場所が行なわれている両国国技館の支度部屋では、和人が準備して親方と南浜、青の海、春風が和人の取組を待っている。


再び潮見部屋。客間に座るおかみさんは静かに呟いた。

「佐藤くん、きっと頑張ってくれるわ」

その瞳は期待と不安が入り混じって揺れている。若手力士の一人が、静かに拳を握りしめる。

「佐藤さん…勝ってください!」


同じ時間、プロヴァンスのテレビに十両取組の中継が映し出されると、店内の空気が一変した。

「きた…!」

柚の声が震えた。その目には、今にも泣きそうな思いと、強く祈る気持ちが入り混じっていた。


相撲部屋で、喫茶店で、商店街で、そして両国国技館の中で…それぞれの場所でひとつの願いを込めて、佐藤和人の登場を待っていた。


「ひが~し~、びゃっこ~お~う~、に~し~、さぁ~と~ぉう~」

呼び出しの声が響いた瞬間、両国国技館の空気も一変した。


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