第4話
優太が土俵に上がると観客席からの応援がさらに大きく響いてきた。観客席にいる父兄たちが声を張り上げて応援してくれている。心臓が激しく鼓動するのを感じながら、優太は相手の目をしっかりと見据えた。相手の体格は自分より一回り大きい。春の大会で見せたその実力をここで改めて感じ取ることになったが、今は怯んではいられない。
(やるしかない…自分を信じろ…)
優太は自分に言い聞かせ、仕切り線に手をついた。そして緊張を振り払い、集中力を高めた。
「はっけよい!のこった!」
立ち合いの合図と共に優太は全力で前に出た。相手も同時にぶつかり合い、土俵が一瞬揺れる。優太は相手の強烈な押しに耐えながら必死にバランスを保とうとした。
(すごい…力が…強い…)
相手の圧力に驚きながらも優太は後退せず、少しでも相手を揺さぶるために動いた。相手のまわしを掴もうと試みたが、相手の動きが早く思うように掴むことができない。さらに相手の攻撃が続き、優太の体は少しずつ土俵の縁へと追いやられていった。
(このままじゃ負ける…何とかしないと…)
優太は必死に考えながら相手の動きを見極める。相手が一瞬力を緩めたその瞬間を狙い、優太は素早く横へ体をかわした。しかし相手はその動きを予測していたかのようにすぐに体勢を立て直し、再び優太に強烈な押しを仕掛けた。
「くっ…!」
優太は懸命に耐えたが、相手の勢いに押され足元が危うくなっていく。さらに追い打ちをかけるように相手は優太のまわしをがっちりと掴み、力を込めて土俵の外へと押し出そうとした。
(もう少しだけ…耐えろ…!)
優太は全力で踏ん張り続けたが、相手の圧倒的な力に抗うことはできなかった。そしてついに足が土俵の外へ出てしまい、勝負は決まったのだった。
「勝負あり!」
審判の声が響くと同時に、優太は土俵から落ちた自分の姿に悔しさを噛み締めた。力は尽くしたがこれが今の自分の実力なのだ。
土俵を下りた優太に立花先生が静かに声をかけた。
「優太、よくやった」
「はい」
優太は深く息をつきながらも目じりに涙がたまっていく。さとられないようにタオルで顔を強くこすると、次の取組に向かう和人に肩をたたかれた。
言葉にせずとも伝わる。小学校時代から苦楽をともにした間柄なのだ。




