第35話
日曜日、柚は待ち合わせの場所でそわそわしながら時計を見つめていた。今日は和人との初めてのデート。翠と樹も一緒だけど、和人と過ごせることが心の中で大きく膨らんでいた。ふと遠くに見覚えのある姿が見え、和人が歩いてくるのが見えた。
「和人くん!こっちだよ!」
柚は緊張しながらも元気に声をかけた。和人が近づいてくると、照れくさそうに微笑みながら返事をした。
「柚ちゃん!おはよう。かわいい服だね!」
和人の言葉に柚の顔が少し赤くなった。
「えへへ…ありがとう!和人くんもかっこいいよ!」
二人はお互いを照れながら見つめ合い、少しの間気まずい沈黙が流れた。しかしすぐに柚が思い出したように口を開く。
「あ、あの二人ももうすぐ来るよ!」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、翠と樹が駆け寄ってきた。
「おはよう!今日はよろしくね!」
樹が元気よく挨拶する。
「楽しみだね!」
翠も笑顔を見せた。和人も安心したように頷きながら、4人の雰囲気が一気に和んだ。
「今日は水族館とスカイツリーだったよね?」
和人が確認するように聞くと、柚が頷いた。
「うん!おかみさんから特別なチケットをもらったんだ!だから、まずは水族館からだよ!」
「そうだったんだ!すごいね!よし、水族館から行こう!」
和人は少しテンションが上がった様子で、軽く手を挙げた。
4人は意気揚々と水族館へ向かった。和人と柚は隣同士で歩き、初々しい心の中に少しだけ期待感が混ざっていた。
水族館に到着すると、早くもたくさんの人が集まっていた。すみだ水族館は東京スカイツリータウンの5階と6階に広がり、入口からは活気が感じられる。
「人多いねー!」
柚が興奮気味に言った。
「そうだね!やっぱり人気なんだなぁ」
和人や樹、翠も周りを見回しながら頷いた。
柚は鞄から4枚のチケットを取り出し、1枚を和人に手渡した。
「和人くん、はい、チケット!」
「柚ちゃん、ありがとう」
「樹くん、翠のも、はい!」
「ありがとう!」
「私、来たことないんだぁ!嬉しい!」
柚が跳ねるようにして言うと、翠がにやりと笑いながら答えた。
「私たちはよく来てるわよ~」
「そうなんだー!デート♡?いいね!」
柚がからかうように言うと、樹が笑いながら時計を確認する。
「まだ時間があるし、いろいろ見よう!」
「何から見ようか?」
柚が提案すると、翠がさりげなく樹に笑いかけた。
「樹くん、アシカもいいよね!」
「アシカかわいいよねー!」
柚もその話題に乗る。和人も笑顔で
「そうだね。今10時だから、いろいろ見て回ろう」
「私、クラゲが見たいな!」
柚が楽しそうに言うと、樹がすかさず反応した。
「柚、わかってるねぇ!クラゲ、いいよな~」
「へへー!」
「和人くんは、何が見たい?」
柚が聞くと、和人は考えたあとに答えた。
「俺は、ペンギンが見たいなあ」
「ペンギンはこっちだね!」
翠が案内しながら言う。
「じゃぁ、ぐるっと回って、ペンギンからクラゲまで行こう!」
「うん!」
みんなが揃って笑顔で頷き、「れっつごー!」と声を揃えて元気よく歩き出した。
水族館の独特な青い光が4人の周りを包み込み、穏やかで楽しい1日が始まった。
水族館内を歩きながら4人は楽しそうに会話を交わしていた。周囲は水槽から青い光が差し込み、まるで海の中を歩いているような感覚が漂う。
「うわ、見て見て!きれいな魚!」
柚が大きな水槽を指さして叫んだ。
「本当だ。きれいだなあ」
和人も感心しながら、ゆっくりと魚たちを見つめた。
「鮮やかな黄色い魚だね。すごい…」
柚は目を輝かせて、水槽に顔を近づける。
「南の方の海の魚かしら?」
翠がつぶやきながら魚を観察する。
「南の方って、魚が鮮やかなの?」
柚が興味津々で聞くと、樹がすかさず案内板を確認した。
「うん、ここに『奄美大島の近海に生息する魚』って書いてあるよ」
「そうなんだー!奄美大島、行ってみたいなぁ!」
柚は夢見るように言った。すると和人がにっこり笑った。
「奄美大島なら巡業で行ったことがあるよ。魚が美味しかったなあ」
「えぇっ!和人くん、そんなところまで行くんだ?!」
「今度、私もついて行こうかな…」
柚が冗談半分で言うと、和人は照れながら答えた。
「うん!巡業は日本全国いろんなところに行けるよ」
「やった!応援に行くね!」
柚が笑顔で言うと、樹も続けて感心したように話した。
「そうか、日本全国に行くんだな。大相撲ってやっぱりすごいよなぁ」
「お相撲さんって、やっぱりすごいね!」
翠も感心しながら和人を見た。
「ほんと…おかみさんに補助としてついていっていいか訊いてみよっと…」
柚が照れながら言うと、和人は照れくさそうに笑った。
「えへへ…柚ちゃんならきっと大丈夫だよ」
4人は笑い合いながら、さらに水族館内を進み、次の展示へと向かっていった。




