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あなたの打ち込んできたものはなんですか?  作者: 共作 群青の海 シエリ
第6章 和人、伸び悩む
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第34話

もうすぐ17時になろうとしている時、和人と翠、樹の3人はプロヴァンスを後にし、柚は少し緊張しながら時計を見上げた。


「あっ…もうすぐ17時かぁ…」

そう呟いた瞬間、入口のドアのベルがカランコロンと鳴り響いた。


「いらっしゃいませー!」

柚が明るく声をかけると、潮見部屋のおかみさんが静かにお店に入ってきた。


「柚さん、こんにちは」

「おかみさん!いらっしゃいませ!」

柚は緊張しながら頭を下げた。

「和人くんからお話を聞いていました!」

「エスプレッソをいただけるかしら?」

おかみさんは優雅に微笑んで、席に着いた。

「はい、エスプレッソですね!」

柚は急いでオーダーを通し、エスプレッソを準備しながら心を落ち着けた。


「急に二人でお話だなんてごめんなさいね」

とおかみさんは、穏やかな声で言った。

「いえいえ、それで…お話というのは…?」

おかみさんは表情を引き締めながら、話を切り出した。

「佐藤くんのことなんだけど、彼は今幕下で、関取まであと一歩のところにいるの」

「はい…すごく頑張ってますよね!」

「ただ、今、部屋での稽古でも伸び悩んでいるのよ」

「そうだったんですね…」

柚は驚きとともに心配そうにおかみさんを見つめた。


「佐藤くんには今、気分転換が必要だと思うの。ほら、一人で思い詰めちゃうところがあるでしょう?」

「そうですね…和人くん、すごく真面目で努力家ですから…」

おかみさんは深く頷き、少し前に身を乗り出した。

「そこで、柚さん、あなたにお願いしたいの」

「えっ?!私、ですか?!」

「佐藤くんを1日、部屋から連れ出してくれないかしら?」

「はい!それなら…できそうです!」

柚は一瞬驚いたものの、和人のためならと快諾した。おかみさんは微笑みながら話を続けた。

「じつはね、私も今のあなたぐらいの歳の頃、親方とたまにデートに行っていたのよ」

「そ…そうなんですね…」

柚は頬を赤らめながら、照れた様子で返事をする。

「そして親方はその甲斐あって関取になったの。親方にも佐藤くんの気分転換のことは話してあるから大丈夫よ」

「わかりました…どこがいいかなぁ…」

「佐藤くんは中学を出て福岡から入門したでしょ?だから、同年代の力士以外に東京で友だちがあまりいないのよね」

そう言いながら、おかみさんは鞄からなにかを取り出した。

「良かったらこの券を使ってくれない?」

おかみさんが差し出したのは、4枚の「すみだ水族館特別入場券」だった。

「水族館!しかも4枚も…!あっ…ありがとうございます!じゃあ、翠と樹くんと4人で行ってみます!」

「柚さん、ありがとう!よろしくお願いするわね」

おかみさんは、安心したように微笑んだ。


「はい!任せてください!」

「エスプレッソ、美味しかったわ。じゃあ私はこれで…」

おかみさんは会計をしてプロヴァンスを後にした。

「ありがとうございました!」

柚はおかみさんをていねいに見送った。おかみさんが去った後、柚は手にした特別入場券を見つめながら、和人のために何ができるかを考えていた。


その夜、柚は自分の部屋で電話を握りしめていた。おかみさんから頼まれた件が頭に浮かび、緊張しながら和人に電話をかける。

「もしもし、和人くん?柚だけど…」

電話の向こうで緊張した声が返ってくる。

「柚ちゃん、どうしたの?」

「えっとね、今日あの後おかみさんがプロヴァンスに来てお話したんだけど、和人くんを1日連れ出してくれないかって話してたの…」

「えっ、俺を?」

和人の声に驚きが混じる。柚も照れながら話を続ける。

「うん、和人くん、最近すごく頑張ってるからちょっと気分転換をしてほしいって…それで…今度、私と一緒に、すみだ水族館に行かないかなって…」

一瞬の沈黙が流れた後、和人が照れくさそうに笑う声が聞こえた。

「ああ…おかみさんが言っていたような気がするな…水族館か…いいね。俺もリフレッシュしたいと思ってたんだ。柚ちゃんと二人で行くってこと?」

「う、うん…二人でもいいんだけど、今日お店で話した翠と樹くんも一緒に来る予定で…」

「そっか、じゃあ俺、一緒に行ってもいいのかな…?」

和人の声が緊張しているのが伝わってくる。柚も顔が熱くなりながら言った。

「もちろんだよ!その…日程を調整したいんだけど、和人くんはいつが都合いい?」

和人は考え込むような声を出した後、答えた。

「うーん…稽古があるから平日は厳しいかな。でも、日曜日なら行けそうだよ。柚ちゃんはどう?」

「私も日曜日なら大丈夫!じゃあ、次の日曜日でいいかな?」

「うん、次の日曜日なら大丈夫!ありがとう、柚ちゃん」

「ありがとうはこっちだよ、和人くん!おかみさんも言ってたけど、ずっと一生懸命頑張ってるから、リフレッシュしないとね」

和人は照れた様子で笑った。

「いや、照れるなあ。でも、リフレッシュできたらまた頑張れる気がするよ」

「そうだね!じゃあ、次の日曜日、水族館で会おうね!」

「うん、楽しみにしてるよ、柚ちゃん」


二人は照れながらも、楽しいデートの予定を立てて電話を切った。電話を切った後、柚は自分の顔が赤くなっていることに気づいて笑みを浮かべた。柚は受話器をしばらく抱きしめ、水族館のチケットを見つめていた。

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