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あなたの打ち込んできたものはなんですか?  作者: 共作 群青の海 シエリ
第6章 和人、伸び悩む
33/52

第33話

5月の夏場所の結果は和人にとって大きな収穫だった。7番の取組の末、4勝3敗で勝ち越しを果たし、なんとか一歩前進した気持ちで本場所を終えた。それから1週間経った日曜日、和人は少しだけ肩の荷が下りた気持ちでプロヴァンスに向かっていた。

プロヴァンスはいつもの穏やかな雰囲気で、常連客たちが静かにコーヒーを楽しんでいる。

和人が到着する少し前、翠と樹が先に来ていた。


「こんにちは!」

翠と樹が一緒に入店し、ちょうどカウンターにいた椿がすぐに気づいた。

「あら、翠ちゃんと樹くんじゃない!仲良くやってる?」

「はい。ケンカもしますけど、仲良く過ごしてますよ」

2人は息もぴったりに答える。

「ケンカなんてするの?仲いいイメージしかないなぁ」

柚も微笑みながら2人を席に案内した。しばらくしてまたドアが開いた。


カランコロン

「いらっしゃいませー!」

柚が振り返ると、そこには和人の姿があった。

「こんにちは!」

和人は疲れた表情ながらも、どこかほっとした笑顔を見せていた。

「あっ!和人くん!」

「夏場所が終わって、今日はゆっくりできるんだ」

「そうなんだ!今日はゆっくりしてってね!」


和人は翠と樹の隣の席に案内され、腰かけると2人に気がついた。

「佐藤さん、こんにちは。この前はありがとうございました」

樹が感謝の気持ちを伝えた。

「いやいや、こちらこそ。大相撲を楽しんでもらえたかな?」

「もちろん!また行こうって話してるんです」

翠も笑顔で話す。

「そっか、良かった。柚ちゃん、ちょっといいかな?」

和人が柚に視線を向けた。


「うん、和人くん、どうしたの?」

柚が驚いた様子で聞くと、和人が真剣な表情で話し始めた。

「実はうちの部屋のおかみさんが、ちょっと柚ちゃんに話したいことがあるんだって。17時ごろこの店に来るって言ってたよ」

「え?おかみさんが?なんだろう…?わかった!」

「おかみさんが2人で話したいそうだから、その時は俺は席を外すけど」

「2人で?どうしたんだろう…」

「うーん、なんだろうね。でもまだ14時だからもう少しゆっくりできるよ。今日は樹くんと翠さんの話を聞きたいなあ」

和人は気を取り直して、穏やかな笑顔で言った。

「そうだね!もちろん!どうぞどうぞ!」

柚は笑顔で2人を和人の席に案内した。


「なに飲む?」

「じゃあ僕はアイスコーヒーお願い」

「はぁい!」

柚が元気に返事をすると、翠と樹もメニューを確認して同時に答えた。

「じゃあ僕たちはアイスティーを」

「はぁい!」


柚はオーダーを取ってカウンターに戻った。しばらくして柚がアイスコーヒーとアイスティーをテーブルに運ぶと、和人がふと笑顔でつけ加えた。

「そうだ、椿さんのナポリタンも食べたいなあ」

「はぁい!ナポリタンお願いします!」

「はいよっ!」

椿が明るく返事をし、厨房でナポリタンの準備を始める。


その後和人と樹、翠は和やかに話しながら少しずつ打ち解けていった。お互いの近況や相撲の話、そしてプロヴァンスでのひと時を楽しみながら穏やかな時間が流れていく。

プロヴァンスは今日もいつも通り、温かく人々を包み込んでいた。


お店が落ち着き、柚もテーブルに合流した。プロヴァンスの温かい雰囲気の中、4人はリラックスしながら話を続けていた。

「そういえば翠と樹くん、大学どう?もうすっかり慣れた?」

柚が尋ねる。

「うん、だいぶ慣れてきたよ。でも課題も多いし、思ってたよりたいへんかな」

樹が答える。

「そうそう、私もびっくりしてる。最初はワクワクしてたんだけど、今は授業についていくのがやっと…」

翠が苦笑いする。

「そっかぁ。でも翠も樹くんもちゃんと頑張ってるんだね。大学の生活、楽しそうでいいなぁ」

柚は微笑んだ。

「いやぁ、楽しいけどやっぱりプレッシャーもあるよね。将来のこととか就職のことも考えなきゃいけないし」

樹が真面目な顔をする。

「うん、そうだね。私も観光の勉強をもっとしたいんだけど、今の研修もやりがいがあってどっちも頑張りたいなって思ってる」

と柚は考え込むように言った。


「そっか、柚ちゃんも頑張ってるんだね」

和人が柚に目を向け、優しく声をかける。

「でも、やりがいのある仕事っていいよね。俺も相撲でもっと強くなって、いつか横綱になりたいって思ってるんだ」

「和人くん、ほんとに頑張ってるよね。今の幕下での取組でもどんどん強くなってる!私も応援してるからね!」

「ありがとう、柚ちゃん。正直言って大相撲は厳しい世界だけど、こうやって応援してくれる人がいるともっと頑張ろうって思えるんだ」

和人は真剣な表情で返す。翠が和人の言葉に続ける。

「大相撲の世界って毎日が稽古の連続でしょ?休みの日とかどうしてるの?」

和人は照れながら答えた。

「基本的に日曜日は稽古が休みで、時間があればこうして外でリラックスしてるよ。あと、親方に言われて食事とかも結構気をつけてるんだ。体重管理も大事だからね」

「そうなんだ、やっぱり大相撲の世界って特別だね。尊敬するよ」

樹も感心した様子で和人に言った。

「いやいや、俺もまだまだだよ。でも、やっぱり好きだから頑張れるんだと思う」

「みんなそれぞれの道で頑張ってるんだね」

と柚が感慨深げに言った。


「私ももっと両国の観光や街のことを学んで、この町の力になりたいなぁ」

「柚ちゃんなら絶対にできるよ」

和人が励ましの言葉をかける。

「ありがとう。みんなにそう言ってもらえると、もっと頑張ろうって思える!」

柚は嬉しそうに微笑んだ。そんな中、椿ができたてのナポリタンを運んできた。


「はい、お待ち遠さま。和人くんの大好きなナポリタンよ!」

「ありがとうございます、椿さん!」

和人は笑顔でお礼を言い、さっそく一口頬張る。

「うん、やっぱり椿さんのナポリタンは最高だな!」彼は満足そうに頷き、他の3人も思わず笑顔になった。

「ところで和人くん、次の本場所はいつ?またみんなで応援しに行きたいな」

柚が訊くと和人は真剣な表情に戻り、答えた。

「次は7月の名古屋場所だよ。ちょっと遠いね。もっと強くなって次こそはもっといい結果を残したい。だから稽古にも一層力を入れるつもりだよ」

「頑張って!私たちもずっと応援してるからね!」

柚が元気に声をかけると、翠と樹も笑顔で頷いた。

「うん、和人くん、絶対にいい結果を出せるよ!私たちもまた観戦に行くよ!」

翠が声をかけると、和人は照れくさそうに頭をかきながら、

「ありがとう、みんなの応援が本当に励みになるよ」と答えた。


「でも柚も仕事たいへんでしょ?観光案内所での仕事って、結構いろんなことに対応しなきゃいけないんじゃない?」

樹が質問すると、柚は考え込んでから話し始めた。

「そうだね、たいへんなこともあるけど、両国をたくさんの人に知ってもらえるのは嬉しいな。相撲が中心の街だけどそれ以外にも素敵な場所がたくさんあるから、もっと多くの観光客の人たちに来てもらえるように頑張りたいと思ってるの」

「柚ちゃん、やっぱりすごいな。自分の街に誇りを持って働けるって、素晴らしいことだと思うよ」

和人が感心しながら言った。

「ありがとう、和人くん!お互い頑張ろうね!」

柚はそう言いながら目を輝かせていた。こうして、和人、柚、翠、樹の4人はそれぞれの夢や目標を語り合いながら、穏やかな時間を過ごしたのだった。

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