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あなたの打ち込んできたものはなんですか?  作者: 共作 群青の海 シエリ
第5章 未来へ
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第27話

キーンコーンカーンコーン


校内に鳴り響くチャイムの音が夏休みの始まりを告げると、教室中が一気に活気づいた。柚は真っ先に机に突っ伏していた顔を上げ、大きな伸びをしながら元気いっぱいに叫んだ。

「あー!終わったぁ!明日から夏休みだー!」

隣の席でそんな柚を笑顔で見ていた友だちの(みどり)がすぐにそれに応えた。


「柚ちゃん、夏休みね!何か計画してるの?」

「翠、夏休み本当楽しみ!でもまだ何も決めてないんだよねー」


斜め前の席でのんびりと教科書を片づけていた(いつき)も、振り返って柚たちの会話に加わる。

「高2の夏かあ…大事な時期だけど…息抜きはしたいよなぁ」

「二人は夏休み、どこか出かけるの??」

柚の言葉に、ちらっと樹を見た翠が頬を赤らめながら答える。

「樹くんと夏祭りに行きたいの。浴衣も着るつもりよ」

「楽しみだなあ」

樹が照れくさそうに笑う。

「えー、夏祭り?いいなあ。私も行きたいなー」

柚は羨ましそうに二人の顔を見つめた。夏祭りの光景が頭の中でふわりと浮かび上がる。しかし、自分の夏の計画はまだ何も決まっていない。


柚が夏祭りの話に夢中になっていると、翠がふと真剣な表情で口を開いた。

「でもね、私たち予備校の夏期講習にも行くの。高2の講座にね」

「そっかぁ…。もう来年の受験に備えてるんだね。二人とも将来のこと考えててすごいな」

柚は感心しながら答えたが、翠はすぐに笑顔で続けた。

「絶対に樹くんと一緒の大学に行くんだ~」

「ああ。お互いがんばらないとな」

樹も照れくさそうに笑いながら答える。そんな二人の姿を見て、柚は考え込んだ。

「ねえ、夏休みの夏期講習、私も一緒に行こうかな」

「おっ、柚も来る?」と樹が驚いたように聞く。

「でも、親は将来お店を手伝ってほしいと思っているのかもしれないんだよね…」

柚は不安気に言葉を続ける。翠がプロヴァンスを思い浮かべながら話す。


プロヴァンスは柚のおじいちゃんの清志が始めた歴史のある喫茶店だ。今は柚の両親と姉の椿が経営している。柚は放課後や土日、長期休みなどはアルバイトをさせてもらっている。


「そうなの?プロヴァンスはいいお店だもんね。歴史もあるし、常連さんも多いし」

「でも、プロヴァンスには椿さんもいるよね?」

「うん。たぶん、お父さんたちはお姉ちゃんと私の2人で継いでほしいと思ってる。でも将来のことを家族とまだ相談したことがなくて…。どうしたらいいんだろう」

「今回がいいタイミングかも。ちゃんと話をしたほうがいいと思う」

樹は優しくアドバイスした。

「うん。言いたいことは言っておいた方がいいわ」

翠も頷きながら話した。

「そうだよね。今夜にでも話してみる!」

柚は決心したように言うと、二人は笑顔で頷いた。

「うん。応援してるからね!」

「ありがとう!夏期講習に行けるようになったら連絡するね」

「うん!じゃあ、またね」

そう言って翠と樹は教室を後にした。柚はまるで歯車が回り出したかのように自分の将来について考え始めた。


柚は学校を出てゆっくりと家へ向かって歩いていた。夕方の柔らかな光が両国の古い街並みを照らし出し、彼女の気持ちは少しずつ落ち着いていく。


この街が大好きだ。小さい頃から両親やおじいちゃんに連れられて歩いたこの道は、どこも懐かしく、温かい気持ちにさせてくれる。

歴史ある建物や昔ながらの商店、相撲に関連したのぼりが並ぶ風景を眺めながら、柚は自然と足を止めた。両国はいつもと変わらない優しい空気をまとっている。生まれたときから育った町。


「私は、この両国の街のためになにかできるかな…?」


ふとそんな疑問が頭をよぎる。プロヴァンスという喫茶店はこの街で長い間愛され続けてきた。柚もその一員として店を手伝い、街の人たちと関わってきたが、それだけではまだ自分が何をしたいのか、何をすべきなのかが見えてこない。


「おじいちゃんやお父さんやお母さん、お姉ちゃんは、この街でずっと頑張ってきたんだよね…」


彼女は一人つぶやきながらプロヴァンスのことを思い浮かべた。自分もこの街で何か役に立つことができるのだろうか? ただ喫茶店を手伝うだけではなく、自分なりの形でこの両国の街をもっと元気にできるのではないか。そんな思いが胸の中でふくらんでいく。

柚はいつものように街を歩きながら、まだぼやける自分の未来に期待と不安を感じていた。

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