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あなたの打ち込んできたものはなんですか?  作者: 共作 群青の海 シエリ
第4章 出逢い
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第25話

そして3日後、春風と和人は再び喫茶店「プロヴァンス」を訪れていた。店内はいつもと同じ落ち着いた雰囲気だが、二人の表情はどこか元気がない。


「春風さん、佐藤さん、なんだか元気ないですね?」

カウンターの向こうから柚が心配そうに声をかけてきた。春風は気まずそうに笑いながら、

「まあ、いろいろあって…」

和人も苦笑いしながら頷くだけだ。柚は心配しながらも店の奥に下がった。店の奥では、コーヒーを入れていた柚のお母さんがにやりと笑って声を掛ける。


「ねぇ、ねぇ、潮見部屋のあのお二人さん、あなたたちに気があるんじゃないの?」

と冗談めかして言った。

「な、なに~!?」

驚いた声を上げるのは、椿の横で調理をしていた柚のお父さんだ。


「まさかぁ!二人ともただコーヒーが好きなだけだよぉ!」

柚は慌てて笑い飛ばす。しかしお父さんは少し考え込んで、

「いや、母さんの勘は当たるんだ!」

と言い張る。お母さんは笑いながら、

「椿はどう思う?」

厨房で料理をしている椿に問いかける。

「えー?そんなことないと思うけどねぇ?」

椿は考えてから首をかしげた。それに柚がすぐに反応した。

「春風さんはわからないけどねぇ?」

柚はからかうようにニヤニヤしながら返す。


その時、お母さんがふと真面目な顔になって、

「そういえば、柚と椿に頼みがあるんだった!」

「ん??どうしたのー?」

「おじいちゃん、大の相撲好きでしょ?こんど二人と一緒に潮見部屋の稽古を見たいんだって」

「わっ!やったぁ!行く行くー!」

柚は大喜び。

「うん、楽しそう」

と椿も嬉しそうに微笑んだ。

「行ってくれる?」

お母さんが確認すると、離れていたお父さんが急に声を上げた。

「な、なんだって!」

「あなた、そんなに目くじら立てないの」

「そうだよー?おじいちゃんのためなんだから!」

柚も続けた。

「そ、そうか…」

お父さんはしぶしぶ納得しながら、ぽつりと言った。

「早く帰ってくるんだぞ!」

「心配しすぎだよー?」

柚はお父さんの心配を笑い飛ばす。そこに柚たちの祖父、芝野清志が入ってきた。このプロヴァンスの初代店主だ。


「お義父さん、この子たちが潮見部屋の見学についていってくれるって」

「おお、柚、椿、明日一緒に来てくれるか、ありがとうな。相撲の稽古は朝早いからのう」

「うん!楽しみ!」

柚は元気いっぱいに答え、椿も静かに笑みを浮かべていた。


そして翌朝、柚と椿は早起きし、祖父の清志とともに潮見部屋の見学に出発する準備をしていた。清志は相撲が大好きで、孫娘たちに稽古の熱気を見せたいとずっと楽しみにしていた。


「おじいちゃん、おはよー!」

「おはよう、二人とも。では行くかいの」

祖父は気合いを入れるように声をかけた。

「うん!お姉ちゃん、なんかおしゃれしてない?」

柚が椿を見てニヤリと笑う。

「そんなことないわよ」

椿は軽く肩をすくめたが、恥ずかしそうに微笑んでいた。(カッコいい相撲記者が来るのよね)と心の中で期待している椿。


「わぁ!私、見学するの初めて!」

興奮気味の柚。そして3人は潮見部屋に到着し、ドアを開けると相撲部屋特有の緊張感が漂ってきた。土俵からは力士たちがぶつかり合う音が響いてくる。


「こんにちは~」

清志が元気に挨拶すると、おかみさんが出迎えた。

「あら、清志さん!お久しぶりです!」

「こんにちは。今日は孫たちも連れてきたんですよ」

「まぁ、あなたはお孫さん?」

「はい!柚といいます!よろしくお願いします」

柚は元気よく答えた。清志が笑いながら続ける。

「わしのかわいいかわいい孫娘たちじゃ。こっちが姉の椿じゃ」

「柚さんも椿さんもよろしくお願いします。さあ、みなさん、どうぞどうぞ」

とおかみさんが優しく案内する。


「失礼します、わぁ…」

柚は初めて見る相撲部屋の迫力に驚きながら、奥へと進んでいく。おかみさんが座敷で力士たちを指導していた親方に声をかけた。

「親方、清志さんたちがお見えよ」

「清志さん、ご無沙汰しております」

「なあに、親方。今日は孫たちを連れてきたんでな」

清志が返す。力士たちが土俵の上でドスドスとぶつかり合う音が響き渡る中、柚が挨拶する。

「はじめまして。孫の柚です」

「椿です」

「はじめまして。これはかわいらしいお孫さんたちですな。良かったらうちの力士たちをじっくり見てやってください」

「はい!今日は祖父と一緒に見学させてください」

柚の言葉に、椿も控えめに微笑みながら頷いた。


こうして、柚と椿は潮見部屋での相撲の稽古を見学することになり、その真剣な力士たちの姿を目の当たりにすることとなった。


土俵では春風が稽古の真っ最中だった。柚はすぐに彼の姿を見つけて、興奮気味に声を上げる。

「あっ!春風さん!」

ちょうど春風は沖縄から来た新弟子の島袋と組んでいた。力強く組み合いながらも、島袋は素早く体を翻し、春風を土俵の上に豪快に投げ飛ばした。


「くそっ!」

と悔しげに声を漏らす春風。

「春風さん、大丈夫…?」

柚は心配そうに見つめた。その瞬間、親方の鋭い声が飛んだ。

「次は佐藤、いけ!」

「はいっ!」

力強く返事をした和人だが、島袋の技に圧倒され、和人も力強く投げられてしまった。


「うっ!」

和人はあっけなく土俵に転がった。


「2人とも、なにをやっとるのだ!」

親方が怒鳴り、周囲の空気が一瞬張り詰める。

「はいっ!」

和人と春風は声を揃えて返事をしたが、投げられた悔しさがこみ上げてくる。島袋が軽く笑いながら挑発的に言った。

「春風さん、佐藤さん、たいしたことないっすね」

「くそ~…!」


春風と和人は歯を食いしばり、悔しさを抑えきれない様子だった。見学していた柚と椿もハラハラしながらその様子を見守っていた。

しかし春風と和人はその後も負け続け、何度も土俵に投げられていた。

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