第2話
和人は元気よく返事をし、準備を整えて玄関を出発した。ドアを開けた瞬間、むわっとした夏の空気が彼を包み込む。すでに太陽は高く、昇り澄んだ青空が広がっていた。セミの鳴き声が耳に届き、本格的な夏の訪れを実感させる。
「よし、行くか!」
和人はバッグを抱え直し、勢いよく走り始めた。まだ朝早いというのに陽射しはすでに強く、肌をじりじりと焼いていく。走りながら和人の顔には自然と笑顔が浮かんでいた。道端には色とりどりの花が咲き、どこかから漂ってくる朝食の匂いを通り過ぎる。
通学路の道端には和人と同様、部活の朝練に向かう同級生たちがぽつぽつと姿を現していた。
「おはよう!」
「和人おはよう!」
夏の風が額に流れる汗をさらっていく。
朝の空気、そして仲間たちとの笑顔。それらすべてが和人にとっては何よりも輝いて見えた。
学校に到着した和人はまっすぐに相撲部の稽古に向かった。校舎裏の土俵にはすでに仲間たちが集まり、準備運動を始めていた。セミの鳴き声が響く中、土の匂いが夏の日差しに混じり独特の緊張感を漂わせている。
和人はすぐに稽古用のまわしを着けて、気合を入れて仲間たちに合流した。中学3年生として迎える最後の夏。後悔のないよう今できることを精一杯やらなくては。
「和人、今日も張り切ってるな!」
小学校から相撲部でともに戦ってきた同級生の崇が声をかけてきた。和人は軽く笑って応えながらすぐに体を動かし始めた。
「当たり前だろ。もう大会間近なんだ。気合十分だよ」
準備運動が終わるといよいよ稽古が始まった。和人は何度も土俵に上がり、仲間たちと激しいぶつかり合いを繰り返した。崇の動きは力強く、そしてしなやかだった。手に汗握る激しい取り組みの中でも彼は常に冷静さを失わず、相手の動きを見極める戦い方ができる選手だ。
「もっと力を入れろ、和人!相手の動きをよく見て間合いをつかめ!引きすぎるなよ!」
顧問の立花先生の声が飛ぶ。
相撲は体力だけでなく精神力も試される競技だ。選手たちは何度倒されてもまた立ち上がる。
取組の相手、そして自分との戦いだ。
「よし、もう一度!」
キャプテンの和人は自分に言い聞かせるように叫び、再び土俵に立った。仲間たちも同じようにそれぞれの力を尽くし、最後まで諦めることなく稽古を続けていた。
やがて稽古が終わる頃には、和人を含む全員が息を切らせて汗だくになっていた。汗で土が全身にこびりついている。しかし、彼らの顔には充実感が広がっていた。疲労感とともに訪れる達成感、それが和人にとって何よりの報酬だった。
「いいぞ、和人!その調子で本番でも頼むぞ!」
立花先生が笑顔で和人を見つめながら声をかけた。
和人は息を整えながら力強くうなずいた。
「はい!絶対に勝ってみせます!」
その声にはこれまで積み重ねてきた努力と、これから挑む戦いに対する強い決意が込められていた。




