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家族と連絡を取った

それから彼女と少しではあるが話すようになった。教室で、夜の公園で。俺が言ったことに対して、少し鬱陶しそうにしながらも、返してはくれる。けれど、それ以上は踏み込めずにいて、それを彼女には見透かされているように思えた。


彼女と別れて、いつも通り、一人夜の道を走る。————このままでいいのだろうか?胸の内に浮かぶ問いを振り払うように、足を前に出す。それでも思考は止まらない。


俺は、彼女にどうなってほしいのだろう。クラスのみんなと笑い合う、賑やかな学園生活を送ってほしいのか。それとも、人数は少なくても、心から頼れる友人を持ってほしいのか。答えの出ない問いを抱えたまま、ただ走り続ける。


こんな時に颯人ならどうするだろうか?きっと、


「悩んでいる方がもったいねー、まずは声を掛けてみようぜっ!」


そんなふうに、迷いなく行動するんだろう。純夏ならどうだろう。


「私も颯人に賛成かな?一緒に遊んでみないと始まらないでしょ?」


屈託なく、そう言いそうだ。俺には、そんな真っ直ぐさはない。そう思っているとふと父の言葉が脳裏をよぎった。


「誰かとの出会いを、素直に楽しいって思えるのは学生のうちだけだ。社会に出たら、立場や年齢を気にすることが増える。年下相手にも敬語を使う事になるんだぞ!!」


そこは半分愚痴も入っているだろなんて思いながら聞いていたっけ。でも、


「同世代と、変に意識せずぶつかれるのは今しかない。なら、当たって砕け散れ!」


その言葉だけは妙に胸の内に残っていた。父さんははっはっはっと笑っていたな。きっと何気ない一言だったんだと思う。けど、当時の俺には何故か大切なように思えたんだ。


俺は自分の方をパシンと叩く。一歩踏み出すか……。上手くいかなくなってから、ずっと連絡を避けていた家族の顔が浮かぶ。自分を変えるなら、逃げていた場所に向き合う。それからだろう。


そんなことを思い、久しぶりに家族と連絡を取るのだった。



***




翌日、落ち着かない気持ちを抱えたまま、学生生活を過ごす。いつ気持ちを伝えるべきか迷いながら、過ごす。結局彼女に気持ちを伝えられたのは夜の公園だった。


「ありがとう、如月さん」


怪訝そうな表情でこちらを見る彼女に、俺は思わず小さく笑ってしまう。それが気に障ったのか、彼女はますます表情を険しくしながら、ほんの少しだけ距離を取った。


「あなたにお礼を言われるようなことはしてないけれど...」


距離を取りながら、完全には離れないでいてくれる。俺が話しかけたからこそ、最後までは聞いてくれるんだろう。律儀だな。


「如月さんと関わるようになって、人との関わり方を見直すきっかけになった」

「はぁ……」


彼女はそんなことかと思いつつ、また空を見上げようする。


「でさ、ずっと避けていた家族と連絡を取った。そしたらめちゃくちゃ喜ばれて、自分の中でもなんか温かい気持ちになれた」


その言葉に一瞬彼女は顔を顰めた。家族で何かあったと察しながらも続ける。


「家族の大切さを改めて感じた。だから、ありがとう」


そういって頭を下げる。数秒経ってから顔を上げると、彼女はまだ俺を見詰めたままで視線が合った。


「俺の顔に何かついてたりする?」


彼女は首を振って否定する。


「あなたもそういう顔するのね?」

「もしかして、変な顔でもしてた?」

「いえ、普通の表情よ」


そんなに普段の俺は取り繕ったような表情をしていただろうか?いや、している気がする。無理に張り付けたような笑顔を浮かべていて。相手に自分の弱さを悟られないようにしていた。なんでかな、彼女の前なら、取り繕わなくていいと思えるのは。


「ジーっと見つめているけど、何?」


彼女は少し嫌そうにしながら俺の事を見つめる。


「いや……何でもない」

「……そう」


彼女はそう言ってまた星空を見つめる。隣に並びあって、同じ景色を共有する。見ている視点は少しずれていて、それでも同じ空を見ていた。何も言わずに、でも少し気が楽になるこの時間が好きだった。


「もしもさ、俺に出来ることがあったら何でも言って欲しい。力になる」


力強く、目に力を込めながらそう宣言する。


「……そう」


彼女はたった一言、呟くのだった。

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