95話 俺たちは、仕事を分け合うんだ
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)。
通勤途中で猫を助けようとして命を落とした――その結果、神様から授かったのは「スマホが使える」というチート能力。
転生先は、なんと壇ノ浦で入水する直前の安徳天皇!?
優雅な平安貴族の暮らしを味わいつつ、同時に目にするのは、当時の庶民が背負う悲惨な現実。
「二度目の死だけは、絶対に避けたい!」
ブラック企業よりはマシなこの世界で、俺は未来知識と努力を武器に全力で生き抜いてやる――!
朝――。
地頭屋形の広場には、青景の里人たちが集まっていた。
子どもを背負った女、すすで顔を黒くした男たち、震える老人……皆の目には、不安が色濃く宿っている。
木こりと牛飼いの一家もいる。
「……今日にも誰かが里を捨てて出ていくんじゃないか」
そんな空気が漂っていた。
親父さん――秀通が一歩前に出る。
虎皮を羽織ったトラさんが横に立ち、六さんや源さんも背後で見守っていた。
「青景の民よ!」
親父さんの声が、朝の空に響き渡った。
「昨日の火消し、皆の力で守り抜いた。牛囲いも無事である! だが……我らは試されている。落人狩りの脅威、飢えの不安。もし今のままでは、青景は荒れ果て、人も土地も消えてしまうだろう」
ざわざわと声が広がる。誰もがそれを感じていた。
親父さんは拳を握り、続けた。
「だが、わしは決めた! 青景を『皆で守り、皆で働く里』とする!」
その言葉に、場がしんと静まり返る。
「男は田畑を牛で耕せ。春の田植えの準備を始めよう。
女は竹を編み、縄をなえ。
子どもも手を貸せる仕事をつくる。
牛の乳を搾り、醍醐をつくる。美味い醍醐を貴族様じゃなく青景の里人、皆で分け合う。
この青景は、誰もが役割を持ち、皆で支え合う土地とする!」
俺は一歩前に出て、声を張った。
「そうだ! 安介も地頭の子として、この青景を守る! ここは俺たちの家だ!」
ハヤテと雁丸が俺の頭上で剣を交差した。
「子どもまで……」
誰かがつぶやいた。だが次の瞬間、
「……そうだ。もう逃げるのは嫌だ!」
「ここで生きるんだ!」
と声が重なっていく。
「いつから何を始めるか」
「どこでやるか」
それを里人が相談を始めた。
父を亡くした牛飼いの子が立ち上がった。
「お願いします。牛の世話を一緒にやってください。牛のお乳がぱんぱんなんだ」
牛飼いの妻も立ち上がった。
「うちは、父ちゃんが亡くなって、牛の乳を搾り切れないんです。
いつでもいいし、ちょっとでもいい。台山の《《牛の牧》》に来てください。
乳しぼりと醍醐作り、お伝えします。一緒にやりましょう。
そして、醍醐がたくさんできたら、地頭屋形に運び、皆で分けましょう。
地頭様、いいですよね? もう貴族への献上はやらないって………
親父さんが大きくうなずく。
「醍醐は、青景の里人皆で分けよう!」
まだまだ修行中の さとちゃんペッ! です。
ブックマークしていただけると、とても励みになります!
リアクションやコメントも大歓迎。
感想をいただけたら本当に嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします!