65話 俺たちは寝床を得た。明日は親父さんに……
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)は猫を助けようとして死んだ。神様からはスマホが見られるチートを授かり、壇ノ浦で入水する前の安徳天皇に転生する。そこは、平安貴族の優雅な生活を味わいつつも、悲惨な当時の庶民の暮らしを知る。
2度目の死は避けたい俺は、ブラック企業よりはましな今を全力で生き抜く。
~あれ?いつの間にか牛若丸から理想の君主と崇められているんだが~
夏に寝泊まりしていた小屋?
もう別の連中がちゃっかり住んでいた。
……まあ、ここは助け合いの場だから仕方ない。
で、俺たち蛇島組7人は――浦長の屋形の土間に転がり込んだわけだが。
浦長の若い衆が「俺がちょっくら言ってきてやる」と現れた。
「おいおい、いつまでここでゴロゴロしてんだよ」
って空気になったところで、助け舟が現れた。
源氏組の、
怪力の杉山さん。
炊き出し名人のトラさん。
丸刈り頭の立花さん。
「一緒に住もうぜ」
そう言って部屋に招いてくれたのだ。
蛇島組7人+源氏組3人=合計10人。
……ぎゅうぎゅう。
だが寝られなくはない。いや、寝られるけど交代制。
「屋根があるだけで、座って寝れる!」
「ありがてえええ!」
もうそれだけで大勝利だ。
「でもよ、親父さん(秀通様)が帰ってきたらどうするんだ?」
その一言に場の空気がぴしっと張る。
親父さんと鎌倉組で4人、じい様まで助け出せたら15人になる。
「……立って寝ればいい」
「それはー」
「根性出せばいける!」
いや、でもな……鎌倉から船で戻るんだぞ。何日もかかって疲れ切ってるはずだ。
横にならせてやりたい。
だから俺たちは決めた。
交代で寝る制度!
若手組――俺、ハヤテ、雁丸、九郎、そしてトラさん。
色男組――杉山さん、立花さん、料理屋、六さん、源さん。
「寝るか働くか! それだけだ!」
「昼間でも、仕事がなければ寝る!」
「寝だめして、親父さんを迎えるんだ!」
屋根の下で毛皮にくるまって布団と枕つき。
あったかくして眠れる。
……これ以上の幸せがあるか。
だが、笑い話ばかりではいられない。
「親父さんが村に戻ったら……俺たちもついて行くか?」
「バカ言え。平家の残党ってことは村中が知ってる。すぐ売られるぞ」
「罪を重ねるだけだな……」
空気が重くなる。
「じゃあ蛇島に戻るか?」
沈黙。
そんな中、料理屋が口を開いた。
「毛皮ももらったし、ここで働いて、むしろやら縄やら帆やら、いっぱい持って帰ろう。桶もたらいも。できれば古い船も買ってな」
「……おお」
「蛇島の対岸に家を建てる。田を作る。炭も焼く。追っ手が来たら舟で逃げる。蛇島にも小屋を作って、そこに隠れる。見つかったら、また逃げる」
静まり返った。
「……捕虜囲いだけは、勘弁して欲しいな」
誰かがぼそっと言った。
また沈黙。
だが最後に――
「明日だ。明日、亀山様のところに親父さんが帰ってきたら……なんとかなるさ!」
その一言に、みんなの表情が少しだけ明るくなった。
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