表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/214

58話 「俺たちは舟の修理をした」

ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)は猫を助けようとして死んだ。神様からはスマホが見られるチートを授かり、壇ノ浦で入水する前の安徳天皇に転生する。そこは、平安貴族の優雅な生活を味わいつつも、悲惨な当時の庶民の暮らしを知る。

2度目の死は避けたい俺は、ブラック企業よりはましな今を全力で生き抜く。


~あれ?いつの間にか牛若丸から理想の君主と崇められているんだが~

砂に乗り上げた舟は、傷だらけだった。

帆の下部は裂け、船体には物がぶつかった跡がいくつも残っている。


俺たちはしばし立ち尽くしたが、六さんが手を叩いて声をあげた。

「よし! 直せるうちに直すぞ!」


秀通様の家臣たち――地侍の四人は漁師なんだ。

彼らは当然のように漁師言葉を使いこなす。

「おい、アカを出せ!」


アカ。舟の中にたまった海水のことだ。

船尾には小さな排水穴があり、普段は栓をしている。

海上で走っているときに海水が入ってきたら、この栓を外せば良い。

走らせているうちに水が抜ける仕組みなんだ。


今は陸に上げているから、重力を借りて一気に水を吐き出させる。


雁丸が舳先を持ち上げ、俺とハヤテが必死に押さえる。

船底の板がゆがみ、穴から水が染み込みそうになっているのが見えた。


「ここ、穴だ……」

俺が指さすと、源さんがうなずく。

「木を削って詰めよう」


源さんは海辺の流木を拾い、刃物で素早く削り始めた。

九郎は縄を解いて裂き、繊維をねじって補強材を作る。

その二つを丁寧にかみ合わせ、穴を埋めていく。


「帆が……切れちまったな」

六さんが飛ばされなかった荷物を開けると、中から針と糸が出てきた。


「縫えば大丈夫だ」


六さんは裂けた帆を膝に広げ、ためらいなく針を動かす。

見事な手さばき。布がみるみる繕われていく。

――さすがだ。俺はその方法を見て覚えた。次は俺がやる。


その間にも、ハヤテが浜に散らばった“お宝”を集めてくる。

「まだ使える! どれも使えるぞ!」

木片、布切れ、縄の端……どれも貴重な資材だ。


皆の動きが速くなった。

割れた板の隙間を埋め、縄で締め付け、布を縫い合わせる。

手は擦り傷だらけ、指先は冷たい風で痺れていたが、不思議と誰も弱音を吐かなかった。


「……よし、これでどうだ」

六さんが舟の側面を叩くと、重々しい音が返ってきた。

頼りない軋みは、もうどこにもない。


雁丸がうなずき、にやりと笑う。

「まだ戦えるな、この舟は」


修理を終えた舟は、「元気になったぜ」というように堂々としていた。

まだまだ修行中のさとちゃんペッ!です。ブックマークお願いします。リアクション、コメントをいただけると、嬉しいです。感想もぜひ!よろしくよろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ