55話 俺たちの小屋は風に飛ばされた
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)は猫を助けようとして死んだ。神様からはスマホが見られるチートを授かり、壇ノ浦で入水する前の安徳天皇に転生する。そこは、平安貴族の優雅な生活を味わいつつも、悲惨な当時の庶民の暮らしを知る。
2度目の死は避けたい俺は、ブラック企業よりはましな今を全力で生き抜く。
~あれ?いつの間にか牛若丸から理想の君主と崇められているんだが~
風は強く、焚き火の炎が大きく揺れていた。
料理屋が手際よく串を返し、魚の脂がパチパチと火に落ちる。
「おう、焼き加減は最高だぞ!」
香ばしい匂いに腹が鳴る。だが、火の粉が舞うたびに胸がざわついた。
「……火が飛ぶぞ」
誰かが声をあげた瞬間、突風が炎を煽った。
「危ねえ!」
俺たちは慌てて火を崩し、焼き上がった魚を掴んで小屋へ駆け込む。
中は暗い。
外では風の音がヒューヒューと唸り、まるで獣が吠えているように聞こえた。
「……は、早く……食べよう」源さんが低い声で言う。
皆で肩を寄せ合い、魚にかぶりつく。
うまい。だが、外の風が心を冷やす。
バンッ!
小屋が大きく揺れた。
突風が板を叩きつける音に、全員が飛び上がる。
「板を押さえろ! 飛ばされるぞ!」
六さんの叫びに、俺たちは必死に壁に手を当てた。
外からも九郎とハヤテが体を張り、板を押さえる。
ゴウッ、と天井が鳴り、布が一瞬で吹き飛ばされた。
見上げれば、黒雲が裂けた隙間から冷たい月が覗いている。
「くそっ……もう天井はねえ!」
雁丸が歯を食いしばる。
突風のたびに小屋は軋み、板が悲鳴をあげた。
暗闇の中、俺たちはただ必死に支え合った。
――恐怖しかない。
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