表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/214

54話 俺たちは笑った

ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)は猫を助けようとして死んだ。神様からはスマホが見られるチートを授かり、壇ノ浦で入水する前の安徳天皇に転生する。そこは、平安貴族の優雅な生活を味わいつつも、悲惨な当時の庶民の暮らしを知る。

2度目の死は避けたい俺は、ブラック企業よりはましな今を全力で生き抜く。


~あれ?いつの間にか牛若丸から理想の君主と崇められているんだが~

舟が浜に引き上げられた瞬間、全員がどっと砂の上に倒れ込んだ。

肩で荒く息をしながら、しばらく誰も言葉を出せなかった。


「……生きて、帰ったな」

六さんがぽつりと呟く。


九郎が駆け寄り、俺たちの顔をひとりひとり確かめるように見た。

「よく戻った……! 心配で、浜から離れられなかったんだ」


ハヤテはまだ涙目で、拳を握りしめていた。

「魚……せっかく獲ったのに……」

声が震える。


俺は肩で息をしながら、その背中を軽く叩いた。

「魚はまた獲れる。でも……命は替えがきかないよ」


雁丸もうなずいた。

「くやしいが、六さんの判断がなきゃ、俺たちは今ここにいない」


六さんはしばらく黙って海を見つめ、それからゆっくり振り返った。

「……あの魚たちが泳いでいく姿を見て、逆に安心したんだ。

俺たちも、同じように生き延びりゃいい」

「その通りだ」

俺は息を大きく吸った。


九郎が笑みを浮かべる。

「魚より、お前らが帰ってきたことが一番の宝だ」


そして、俺たちは互いに顔を見合わせ、声を上げて笑った。

涙と潮に濡れた顔。


舟を浜に引き上げたあとも、俺たちは休む間もなく動き出した。

「よし……魚を陸に上げるぞ!」

六さんの声に全員が立ち上がる。


舟の中で、まだ銀色の鱗がぱたぱたと跳ねていた。

「よいしょっ……!」

雁丸とハヤテが網を引き上げる。

俺も加わり、砂浜に魚を広げると、一気に潮の匂いが立ち込めた。


「すげえ……」

思わず声が漏れる。

丸々としたアジ、脂ののったイワシ、銀色に光る小鯖。(さば)

持ち帰った分だけでも、十分だ。


九郎が目を細めて爽やかに言った。

「これだけあれば、今夜の宴も楽しいね」


「ごほごほっ」

源さんが咳をしている。

……昨夜からだ。心配だ。


――天候の悪化。暴風雨。厳しい寒さ。

六さんの決断は正しかった。


クロエの情報では、この冬は格別過酷だという。

俺たちもそろそろこの生活を手放すときかもしれない


まだまだ修行中のさとちゃんペッ!です。ブックマークお願いします。リアクション、コメントをいただけると、嬉しいです。感想もぜひ!よろしくよろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ