52話 俺たちの蛇島生活を紹介しよう
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)は猫を助けようとして死んだ。神様からはスマホが見られるチートを授かり、壇ノ浦で入水する前の安徳天皇に転生する。そこは、平安貴族の優雅な生活を味わいつつも、悲惨な当時の庶民の暮らしを知る。
2度目の死は避けたい俺は、ブラック企業よりはましな今を全力で生き抜く。
~あれ?いつの間にか牛若丸から理想の君主と崇められているんだが~
暴風雨がやってくる――そして、その先には厳しい冬が待っている。
クロエから聞いたその情報が頭にこびりついて、俺の心はどうにも晴れなかった。
けれど、日々の暮らしは待ってくれない。
ここでの生活にも、いつの間にか日課ができていた。
朝は、俺とハヤテと雁丸で川へ水汲みに行く。
冷たい流れに手を突っ込むと、寝ぼけた身体が一気に覚める。
戻れば料理屋が朝粥を用意してくれていて、湯気の向こうに漂う香りだけで腹が鳴った。
食後は六さんの提案を聞く。
「今日は食料だな。投網漁に出るぞ」
「いやいや、枝拾いも大事だ。焚火や串焼きには燃料が要る」
「宝探しも悪くねえ。浜にゃまだ打ち上げ物がある」
俺たちはそれぞれの役割を決め、海へ、森へ、浜へと散っていく。
夕暮れになると、全員が小屋に集まり、自然と宴が始まる。
「見ろ、このでっかい鯵を!」
「俺は貝とカキを獲ってきたぜ!」
「今日の宝はこれだ。なんと布切れだぞ!」
笑い声と拍手が絶えず、ここが一日の中で一番楽しい時間だ。
美味しいひょうたん水もある!
やがて夜。
秋の日没は早く、灯りのない島では暗闇がすぐに支配する。
寝床に横になると、誰かが昔話をしたり、冗談を言ったり。
やがて誰かの寝息が合図になり、みんなが静かに眠りにつく。
スマホも、パソコンも、テレビも、電気も、蠟燭さえもない。
だが、頭上には無数の星が瞬いている。
月明かりは俺たちを優しく照らしてくれる。
夜は……長い。けれど心は満たされていた。
椀は各自が海水で洗い、最後に貴重な真水を注いで飲む。
ひょうたんの青い匂いが鼻をくすぐるが、空腹が最高のソース。
俺の好きだったクラフトビールにだって負けない美味しさだ。
トイレは自分で穴を掘って済ます。
葉っぱは貴重なトイレットペーパーだ。
用を足したら猫のように葉で覆う。
林は広いから、それぞれ自分のお気に入りの《《場所》》を決めていた。
――便利さはなくても、生きていける。
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