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50話 俺たちは保存食を作った

ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)は猫を助けようとして死んだ。神様からはスマホが見られるチートを授かり、壇ノ浦で入水する前の安徳天皇に転生する。そこは、平安貴族の優雅な生活を味わいつつも、悲惨な当時の庶民の暮らしを知る。

2度目の死は避けたい俺は、ブラック企業よりはましな今を全力で生き抜く。


~あれ?いつの間にか牛若丸から理想の君主と崇められているんだが~

浜に戻ると、料理屋はすでに火を起こして待っていた。

「おお……見事だな! こりゃあ、やり甲斐がある」


桶からあふれるほどのいわし

潮の香りに混じって、皆の顔が一気にほころんだ。


料理屋は包丁をひらりと抜き、光を反射させる。

「よし、手分けして処理するぞ。新鮮なうちが勝負だ!」


六さんと源さんは、腹を開いて内臓をかき出す。

俺とハヤテは海水で鰯をすすぎ、ぬめりを落とす。

――ハヤテはやっぱり上手い。動きに無駄がない。


「鰯の干物は、海水に漬けて日陰干し。

 お日様にあてすぎると脂が悪くなるんだ」

彼は得意げに教えてくれた。


二人で日陰へ運び、風の通る場所に並べて干す。


料理屋がのぞき込んできた。

「うん、いい風だ。秋晴れだからよく乾くぞ」


一方で九郎は、長めの枝に魚を口から刺していく。

――魚の串刺し。


なるほど、料理屋が枝を集めていたのは、このためだったか。


九郎は焚き火のそばに串を並べる。

「これは今日食べる分だって」

そう言って、眩しいくらい爽やかに目を細めた。


俺はちょっと探偵気取りで、首をかしげる。

「ねえ、ところで料理屋。燻製ってどうやって作るの?」


「見とけ」

料理屋は鼻を鳴らし、自慢げに顎を上げた。

「穴を掘って焚き火を落とし、濡れた木で煙を出す。

 その煙で魚をいぶすんだ。日にちが経っても腐らねえし、味も深くなる」


煙の流れを読んで手を動かす姿は、戦場の料理人というより、一流シェフそのものだった。


「こっちの鰯は塩漬けだ。カメに詰めれば冬までもつ」

料理屋が真剣な声でつぶやくと、作業の空気が引き締まった。


――冬を越すには、今ここで食料を確保するしかない。

俺たちはその言葉に背を押されるように、手を止めずに動き続けた。

いや、まじか。冬、ここで過ごすのか。

風、雨、雪。無理……じゃね?

俺は、サッシのある風の通らない家で生まれ育ち

「残さないで食べなさい」と言われても、嫌いな食べ物は残していた。

そんな俺にこんなサバイバル。

やってみてわかった。……無理!


そんなことを考えながら、鰯の腹を抜き、塩漬けを作った。

「うまくなったじゃないか、安介!」

「まあな」

そうして皆が汗だくで働いていると――


「おーい、面白ぇもん獲ったぞ!」

源さんの声が浜に響いた。


振り向くと、手に持っていたのは……

「うわっ、蛇!」

俺とハヤテは同時に飛び退いた。


源さんは笑いながら、首をしっかり掴んでいる。

「噛まれねぇよ。冬が近いから、毒持ちは大人しくなる」


「……食うの?」俺は顔をしかめた。

「当たり前だろ。蛇はな、皮をはいで焼けば、鶏肉よりうめぇんだ」

六さんが平然と言い放つ。


料理屋も包丁を構えた。

「なら俺がやろう。肉は串焼きに、骨は出汁になる」


黒光りする蛇の体を、料理屋は迷いなく裂いていく。

内臓を捨て、肉を削ぎ、串に刺す。

じゅうじゅうと脂が滴り、香ばしい匂いが焚き火の上に広がった。


「……見ろよ! うっまそう」

ハヤテがごくりと唾を飲む。


「じい様に食べさせたい」

九郎が小声で呟く。


――そのとき、栗を抱えた雁丸が戻ってきた。


「ほら、拾ったぞ。焼き栗だ!」

雁丸は得意そうに笑う。


「対岸の林で栗を見つけたろう? きっとこの島にもあると思った」


焚き火の端に栗を放り込むと、ぱちん、と殻が弾ける。

甘い匂いが広がり、空気が一気に華やいだ。


鰯の焼ける匂い、燻製の煙、蛇の脂、そして栗の甘さ――

食欲の波に、誰も逆らえない。


「よし! うたげだ!」

六さんが声を張り上げる。


七人は焚き火を囲み、手にした串をかじった。

「……うまっ!」

蛇の肉は意外にも柔らかく、鶏肉のような旨味が口に広がる。


「鰯も塩が効いてる!」

「栗、甘ぇ!」


焚き火の周りは笑い声で満ちた。

戦も敗北も、追われる身であることも、この一瞬だけは遠ざかる。


――俺たちは生きている。

そして、ちゃんと食べられている。


この島の名前が蛇島だということに感謝した。

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