48話 俺たちは漂流物を拾い集めた
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)は猫を助けようとして死んだ。神様からはスマホが見られるチートを授かり、壇ノ浦で入水する前の安徳天皇に転生する。そこは、平安貴族の優雅な生活を味わいつつも、悲惨な当時の庶民の暮らしを知る。
2度目の死は避けたい俺は、ブラック企業よりはましな今を全力で生き抜く。
~あれ?いつの間にか牛若丸から理想の君主と崇められているんだが~
六つのひょうたんに水を汲み終えると、舟はずしりと重みを増した。
「島へ帰ろう」
雁丸が短く言った。
雁丸は慎重だ。
帆を半ばだけ張り、風に任せて川を下る
「待って。砂浜に、よさそうなものがある!」
ハヤテは身を乗り出した。
こうなったハヤテはもう何も見えない。
舟を浅瀬に乗り上げた。
俺たちは降りて、舟を浜に運びあげた。
もうハヤテは駆け出している。
「おい、あっちに縄があるぞ!」
ハヤテが叫ぶ。
砂浜には、打ち上げられた板切れや壊れた桶が散らばっていた。
塩で白く固まっているが、まだ使えそうだ。
「こっちは木の箱だ。……米俵でも入っていたのか?」
雁丸が蓋を割り、欠けた板を脇に抱え込む。
俺も歩きながら拾い集める。流木一本、釘一本でも、今は宝物だ。
森へと足を踏み入れると、空気が変わった。
落ち葉の中に丸い実が転がっている。
「……栗だ!」
思わず拾い上げて叫ぶと、ハヤテも両手いっぱいにかき集める。
「こんなにあるぞ! 焼いたらうまいぞ!」
さらに進むと、木々の間からひらけた土地が見えた。
黄金色の稲束が並び、畦道にカカシが立っている。
遠くに藁屋根。人の暮らしの気配が、そこに確かにあった。
俺は息をのんだ。
「……村だ」
――人に会いたい。
人の中で暮らしたい。
でも、それは死につながるんだ。
雁丸がすぐに低い声で制した。
「戻るぞ。人には会うな」
その声音は、剣を抜くよりも鋭かった。
役人に告げられれば、俺たちはすぐに狩られる。
安堵と恐怖が入り混じり、喉が渇いたように苦しくなる。
「……わかった」
俺は拾った栗を握りしめ、小さくうなずいた。
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