46話 俺たちは蛇島で水不足に直面した。
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)は猫を助けようとして死んだ。神様からはスマホが見られるチートを授かり、壇ノ浦で入水する前の安徳天皇に転生する。そこは、平安貴族の優雅な生活を味わいつつも、悲惨な当時の庶民の暮らしを知る。
2度目の死は避けたい俺は、ブラック企業よりはましな今を全力で生き抜く。
~あれ?いつの間にか牛若丸から理想の君主と崇められているんだが~
「……水が、ない」
料理屋が頭を抱えて嘆いた。
ひょうたん六本にくんだ真水なんて、あっという間だったのだ。
みんなで飲んで、貝や海藻を煮て、火にかけて……気づけば底をついていた。
「こりゃ、命綱が切れるのと同じだな」
雁丸の声に、場が静まり返る。
「あっちの岸には川があるはずだ」
六さんが口を開いた。
「海に流れ込む小さな川筋が、昨日の探索で見えた」
料理屋は必死の声で言う。
「頼む……できれば毎日、水だけは汲んできてくれ。こればかりは、魚でも米でも代わりにならん」
俺はうなずいた。
水がなければ、どんなに魚を獲っても、どんなに米を残しても死ぬしかない。
俺は思い切って提案した。
「それと……米はできるだけ使わないでおこう」
ハヤテが「ええっ?」と声を上げた。
「できるだけ、獲ったもので食いつないでいこう。そうしないと――」
俺は言葉を切った。
みんなの視線が俺に集まる。
7歳男児の発言だ。
「……雪に埋もれる冬、どうするんだ?」
その言葉に、場の空気がぐっと冷えた。
誰もが想像したのだ。
荒れる冬の海。食料が尽きた小屋。火のそばで震える自分たちの姿を。
「だからこそ、今は試されているんだ」
俺は拳を握った。
「魚も獲る。海藻も拾う。山から木の実も探す。そして、毎日海を渡って川の水を汲む」
雁丸がうなずき、六さんが笑った。
「よし、仕事は決まったな。今日からが、本当の生き残り戦だ」
焚き火の炎が揺れ、全員の顔を赤く照らした。
その目は、もう「漂流者」ではなく――
試練に挑む戦士のそれになっていた。
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