45話 平家の落人たちは蛇島で家を建てる
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)は猫を助けようとして死んだ。神様からはスマホが見られるチートを授かり、壇ノ浦で入水する前の安徳天皇に転生する。そこは、平安貴族の優雅な生活を味わいつつも、悲惨な当時の庶民の暮らしを知る。
2度目の死は避けたい俺は、ブラック企業よりはましな今を全力で生き抜く。
~あれ?いつの間にか牛若丸から理想の君主と崇められているんだが~
俺とハヤテと雁丸の三人は陸にあげた舟の中
野宿組の四人も同じだったらしい。
朝になって顔を見れば、全員、目の下にくっきりと隈。
「……だめだ、眠れなかった」
ため息の連鎖反応が起きていた。
六さんが腕組みして、目を閉じた。
「まずは雨露をしのぐ屋根だ」
その言葉が合図のようになり、俺たちは朝飯前に漂流物を集めに散った。
浜に並べられたのは、海に打ち上げられた黒ずんだ板、節だらけの流木、焼け焦げて破れた帆布。
陸にいたなら全部ゴミだ。けれど今の俺たちには――宝物に見えた。
「これで生きられるなら、立派な材料だ」
「柱はどうする?」とハヤテがたずねる。
雁丸はすぐに、浜の端に立ち枯れた木を指さした。
「あれで足りる」
俺たちは力を合わせ、枯れ木を倒した。
そして、木槌代わりの石で杭を打ち込み、流木を組んで骨組みを作った。
縄やむしろを持ってきていたのが役立ち、形ができていく。
「屋根は斜めにして雨を流すんだ」
六さんの声に従い、帆布を張って勾配をつける。雨が落ちれば桶で受けて、飲み水に変えることができる。
壁は片側だけ。北風を防ぐように板切れを重ねた。南側には森が広がり、表に出て北を見渡せば鳥居と海。見張りの場所としても悪くない。
「一日がかりだったな……でも、思ったより、良いものができたな」
九郎が汗を拭って爽やかに笑う。その笑顔に、みんなの緊張が少しほぐれた。
料理屋が火を起こしていた。小枝を折り、乾いた草を重ねて火打ち石を打つ。ぱちぱちと火が弾け、煙が立ちのぼる。潮風に混じって香ばしい匂いが流れ込んできた。
「今日は貝と海藻の雑炊だ。腹に染みるぞ」
彼は貝殻をすり鉢代わりにして塩を潰し、汁の味を整えた。
「おお……うまそう」
「匂いだけで生き返るな」
腹を満たすと、日は落ちていた。
月明かりに照らされた小屋がやけに頼もしく見えた。板と帆布の寄せ集めだとしても、ここが俺たちの居場所になるんだ。
安堵の夜
七人で小屋に身を寄せた。
外から波の音がかすかに届いてきた。
「これでひとまずは寝られるな」
六さんの言葉に、誰もが黙ってうなずく。
誰かの寝息が聞こえてきた。
俺は目を閉じた。
――ここから、俺たちの新しい日々が始まる。
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