44話 蛇島の探検
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)は猫を助けようとして死んだ。神様からはスマホが見られるチートを授かり、壇ノ浦で入水する前の安徳天皇に転生する。そこは、平安貴族の優雅な生活を味わいつつも、悲惨な当時の庶民の暮らしを知る。
2度目の死は避けたい俺は、ブラック企業よりはましな今を全力で生き抜く。
~あれ?いつの間にか牛若丸から理想の君主と崇められているんだが~
俺は――このチームのリーダーだ。
いつか必ず、平家を再興してみせる。
……そう思ってはいるんだけど、やっぱり六さんにはかなわない。
今はまだ、この時代の生き方に慣れる段階だからな。
六さんが立ち上がった。
「よし、まずは探索だ!」
ハヤテはもう今にも駆け出しそうだ。
「じゃあ、この西の浜からぐるっと南へ回って、東に出て北に戻る! 一周してみよう!」
「全員で行く?」
「いや、一人は舟と火の番をしたほうがいい。舟を盗まれたら終わりだ」
「なら、今日は俺が残ろう」
料理屋が笑顔で手をあげた。たぶん、帰ったら美味いものを作って待っててくれるに違いない。
西の浜は漂流物だらけだった。
「これ……船の破片か?」
黒く焦げた板を拾い上げると、ハヤテがもう山のように集めていた。
「棒もあるぞ」
雁丸が剣みたいに振り回す。
「後で取りに来よう!」
六さんが呼びかけ、俺たちはさらに奥へ。
南側は岩場が続いていた。
「サザエ! うまそうだな!」
九郎が嬉しそうに岩をのぞき込む。
小魚もいる。海藻もある。最高の食材だ。
「ここ、釣り場にぴったりだな」
源さんはもう竿を立てる場所を決めてる。
――この島、美味いものに困らないじゃないか!
やがて東側に回り込む。
「ここは波が穏やかだな」
九郎が笑う。
「今日は西風だからな。明日は荒れるかも」
そこにも漂流物。波に白く磨かれた流木は、まるで骨のようだ。
「いい椅子になりそうだ」なんて声も出る。
舟は波の穏やかな東浜に移すことにした。
大切な舟だ。しっかり陸に上げて木に括りつける。
舟が流されたら……もう帰れない。
「おーい、神様がいるぞ!」
ハヤテの声にみんなが駆け出す。
突き出た岬に鳥居。その奥にはご神体らしき石があった。
「海の安全の神様だな」
俺たちは手を合わせ、安全を祈った。
六さんが振り返る。
「神様の近くに寝床を作ろう。西も東も見渡せるし、不審な船もすぐに見つけられる」
「よし! 板や棒、木切れでも何でも持ってこい!」
……でも、どう見ても七人分のスペースはない。
ハヤテが言った。
「小屋ができるまで、俺たち三人は舟で寝るよ」
六さんがニッと笑った。
「そうしてくれ。今、言おうと思ってた」
みんなの願いはただひとつ。
――どうか雨が降りませんように。
料理屋が桶を並べてぼやく。
「……いや、むしろ降ってほしいな。水が欲しい」
結論はシンプルだ。
ーー一刻も早く小屋を建てるしかない。
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