31話 親父さん鎌倉へ出発 どうかご無事で
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)は猫を助けようとして死んだ。神様からはスマホが見られるチートを授かり、壇ノ浦で入水する前の安徳天皇に転生する。そこは、平安貴族の優雅な生活を味わいつつも、悲惨な当時の庶民の暮らしを知る。
2度目の死は避けたい俺は、ブラック企業よりはましな今を全力で生き抜く。
~あれ?いつの間にか牛若丸から理想の君主と崇められているんだが~
漁から帰る船の帆が、風に大きくふくらんでいる。
網の中には跳ねる魚たち。今日も大漁だ。
さっさと帰って、朝飯だ!
女や年寄りが漁船を迎えに来ている。
もやいを投げると、お花ちゃんが受け取り杭に括ってくれた。
今日も赤い前掛け姿が可愛い。
「お花ちゃーん。ありがとーー!」
「安ちゃん、今日もお手伝い頑張ったね。大きくなったら立派な漁師さんになれるよ」
嬉しい嬉しい。弟扱いだけど、……ハヤテがふくれている。
さあ、腹ペコだ。朝飯を食うぞ。
おおっと、焚き火の煙がこっちにきた。目に染みる。
港の朝は、なぜか煙と人の声でいっぱいだった。
大きな船の周りには、鎧を着た侍や荷を運ぶ者たちがせわしなく動き回っている。
その中心に――親父さん、藤原秀通の背中があった。
あの平家の侍のじいさまとそっくりの背中をもっている、……息子なのだ。
「親父さん? 鎌倉……行くのか?」
俺の声は、雑踏に紛れたかと思われた。
けれど、親父さんは気づいて振り向くいた。
「ああ、安介さ……ん。必ず戻る。待っててくれ……礼をしたい」
そう言って、俺の肩を軽く叩く。
この人、本気だ。本気で父親の助命するんだ。
――でも、そんなことして、本当に戻ってこられるのか?
鎌倉には、残酷な源頼朝がいる。弟の義経さえも殺そうとする。
男たちが声をかける。
「親父さん!」
「おお!!」
「……お気をつけて」
おやじさんは短くうなずき、船へと向かう。
他にも3人の家臣が乗り込んでいった。
見送りは、3人だ。
潮が満ち、船は静かに動き出した。
船の別れは、なぜか涙をさそう。
残った侍たちが手を振っている。
残った侍たちは、明日も同郷の人を探し、遺体を埋めるのだろうか。
今の馬関は……暑さも手伝って遺体の匂いがキツイ。
お盆の真っただ中です。平家の侍の霊も帰ってきているでしょう。下関には、平家一門の墓「七盛塚(平家塚)」があります。今夜あたり、霊たちが宴会などをしているかも。
まだまだ修行中のさとちゃんペッ!です。★やリアクション、コメントをいただけると、嬉しいです。感想もぜひ!よろしくよろしくお願いします!!




