29話 信じる 話す 手を取り合う
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)は猫を助けようとして死んだ。神様からはスマホが見られるチートを授かり、壇ノ浦で入水する前の安徳天皇に転生する。そこは、平安貴族の優雅な生活を味わいつつも、悲惨な当時の庶民の暮らしを知る。
2度目の死は避けたい俺は、ブラック企業よりはましな今を全力で生き抜く。
~あれ?いつの間にか牛若丸から理想の君主と崇められているんだが~
網の影に隠れるようにして、俺と親父さんは向かい合った。
木箱をひっくり返しただけの腰掛けは、潮で湿っている。
座り心地なんて、知ったことか。
雁丸と秀通、
二人が俺をじっと見つめる。
雁丸「何も言うな」
秀通「何でもいいから言ってくれ」
逃げ場なんて、とっくにない。
観念した俺は、深く息を吸った。
胸の奥に溜まっていた言葉を、一気に吐き出すしかなかった。
「あんたの父上は捕虜となって連行された。
戦が終わって数日後のことだった。
目が合って、お互いを確かめ合った気がした」
秀通は俺の手を取った。
「やはり、じい様を知っていたか。
可愛いお子よ。教えてくれてありがとう」
雁丸は立ち上がった。
「よし、それでは、さらばじゃ」
秀通は俺の小さな手を取って頭の上に掲げ、拝んだ。
「可愛いお子よ。名前は何と言うのかな。礼をせねばならん」
雁丸が「そいつは安介だ。親が死んで漁師の見習いをやっている。
俺たち三人ともだ。礼は結構。さあ、行くぞ」
「……俺は、安徳だ」
一瞬で空気が変わった。
雁丸の手が刀の柄にかかる。
秀通を斬る気だ。
「秘密を知ったら、生かしておけん!」
ーーそうだ、こいつは新選組・沖田総司だった。
腰が引けそうになる俺の前で、秀通が片手を上げた。
その仕草は、静かで、それでいて絶対的だった。
「大丈夫だ」
低く落ち着いた声。
驚きも怒りもなく、ただ真っすぐに俺を見ている。
「大丈夫だ! わしは死んでもそのことは喋らんぞ」
秀通は、俺に向き合い改めて姿勢を正した。
「安徳様。生きていらっしゃったのですね。ご苦労をなさったことでしょう」
雁丸とハヤテに向き合った。
「わしは鎌倉に行く。戦の褒賞を貰えるはずじゃ。そこで、褒賞を辞退して父の助命を頼んでくる。捕虜である父を助け出したいのじゃ。そして、その時……改めて、おぬしら3人に礼をしたい。……毎月1日に亀山様に来てくれないか。そうすれば、きっとまた会える」
「……」
声が出ない。
信じていいのか、それとも――。
「必ず帰ってくる!」
雁丸が小さく舌打ちをして、刀から手を離した。
その音で、俺の張り詰めていた息が一気にほどける。
「……わかった。待っている」
俺は、うなずくしかなかった。
まだまだ修行中のさとちゃんペッ!です。★やリアクション、コメントをいただけると、嬉しいです。感想もぜひ!よろしくよろしくお願いします!!




