19話 迫りくる落人狩り
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)は猫を助けようとして死んだ。神様からはスマホが見られるチートを授かり、壇ノ浦で入水する前の安徳天皇に転生する。そこは、平安貴族の優雅な生活を味わいつつも、悲惨な当時の庶民の暮らしを知る。
2度目の死は避けたい俺は、ブラック企業よりはましな今を全力で生き抜く。
~あれ?いつの間にか牛若丸から理想の君主と崇められているんだが~
その時、松の陰から「がさっ」という音が響いた。
雁丸が刀の柄に手をかけた。
現れたのは、鎧兜もつけない下級の武士がふたり。
手にはしっかり弓と槍。顔は獲物を見つけた獣の目だ。
先頭の侍が叫んだ。
「平家の一門か? 名を名乗れ!」
ハヤテは俺と雁丸を見た。俺は首を振る。
ハヤテが叫んだ。
「ちがう。漁師の子だ」
だが、侍の目が俺に止まり、ギラリと光った。
「……小僧、その顔……どこかで見たな」
次の瞬間、侍の口元が歪んだ。
「そうか! 安徳天皇だな!」
背中に氷を押しつけられたみたいに、全身が固まった。
なんで……ばれた?
侍がにやりと笑う。
「安徳さま、悪く思わんでくだせえ。我らも生きて行かなきゃならねえんで。お命頂戴する!」
すると、もう一人の侍が口を開いた。
「いや、待て。生け捕りの方が褒美が多いぞ。ガキは生け捕りがよい。義経様は、安徳と一緒に消えた刀をもってきたら、国を一つやると……」
「ああ、だったな」
「ガキをつかまえて、ありかを聞くんだ」
もう逃げようがなかった。
先頭の侍が笑いながら、弓を構えた。
「……ガキの足を狙え」
ハヤテが短剣を抜いた。しかし、すぐに雁丸の手が制した。
「動くな」
低い声には、鋼のような冷たさがあった。
相手は二人。弓の照準は、すでに俺に向けられていた。
雁丸の指が、刀の柄にかかった。
その動きが、ゆっくりと、しかし確実に、戦いの始まりを告げていた。
まだまだ修行中のさとちゃんペッ!です。★やリアクション、コメントをいただけると、嬉しいです。感想もぜひ!よろしくよろしくお願いします!!