111話 火切り道をつくるぞ!
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)。
通勤途中で猫を助けようとして命を落とした――その結果、神様から授かったのは「スマホが使える」というチート能力。
転生先は、なんと壇ノ浦で入水する直前の安徳天皇!?
優雅な平安貴族の暮らしを味わいつつ、同時に目にするのは、当時の庶民が背負う悲惨な現実。
「二度目の死だけは、絶対に避けたい!」
ブラック企業よりはマシなこの世界で、俺は未来知識と努力を武器に全力で生き抜いてやる――!
三日後。
山狩り――台山を焼き尽くす日が迫っていた。
「周りの地頭が全面協力するらしいぞ。人手を集めて……火をつけるんだと」
その噂に、屋形の広間は重苦しい空気に包まれていた。
――ならば。
俺たちにできるのは、ただ一つ。
「火切り道をつくる!」
親父さんの声が響いた。
延焼を防ぐために、台山をぐるりと囲む幅一メートルの帯を切り開く。
草を刈り、小枝を拾い、裸の土を出す。
それをやりきらなければ……火は里にまで迫り、家も、牛小屋も、すべて燃える。
地頭屋形に、青景中の人々が集まった。
男も女も子どもも、誰一人残らず。
「おらも行くぞ!」
腰の曲がったじいさんが杖を突いて立ち上がる。
「ちょっと待ちなさいよ、足も悪いのに!」
娘に止められながらも、じいさんは笑って言った。
「足は動かんが、手はまだ利く。座ってでも草ぐらい刈れるわい!」
その得意げな表情に、俺はぐっと胸が熱くなった。
……ありがとう、じいさん
俺とハヤテと雁丸は、牛小屋から左右に伸びる道を担当した。
鎌を振り下ろすたびに、ざっざっと草が倒れていく。
「ほら安介、もっと腰を入れろ!」
ハヤテが笑いながら声をかけてくる。
――くそ、こいつ何をやらせても上手いんだ。
トラさんや源さんは柴尾という地名の登り口から入って道を広げていく。
親父さんも、じいさまも、自ら山に入った。
「よいしょ、よいしょ!」
小さな子どもたちまでが小枝を拾って走り回る。
おばあさんたちは鎌を振りながら、孫の世話をしている。
「こんなおばあさんがいたのか……」
「こんな小さな子まで……」
思わず心の中でつぶやいた。
おさえさんだけは赤子と一緒に屋形に残り、料理屋と一緒に大鍋で雑炊を煮ているはずだ。
腹をすかせては働けぬ。
山はざわめき、草を刈る音が一日中響いた。
誰もが黙々と、ただ一つの願いを胸に動いていた。
――守るんだ。俺たちの里を。
まだまだ修行中の さとちゃんペッ! です。
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