110話 3日後に大変なことが起こるぞ!
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)。
通勤途中で猫を助けようとして命を落とした――その結果、神様から授かったのは「スマホが使える」というチート能力。
転生先は、なんと壇ノ浦で入水する直前の安徳天皇!?
優雅な平安貴族の暮らしを味わいつつ、同時に目にするのは、当時の庶民が背負う悲惨な現実。
「二度目の死だけは、絶対に避けたい!」
ブラック企業よりはマシなこの世界で、俺は未来知識と努力を武器に全力で生き抜いてやる――!
地頭屋形の広間。
親父さんがせっかく差し出した盃を誰も受け取らない。
四人の中で一歩前に出た男がリーダー格だ。――その顔はこけた頬と突き出た顎で、まるでカマキリのようだった。
「山狩りをする。景清を探し出す」
低く、ざらついた声が響く。
親父さんがわずかに眉を動かしたが、口を挟むより早く、カマキリ男は続けた。
「我らの山狩りは……山全体を焼き払うことだ」
ぞわり、と背筋を冷たいものが走る。
「奴は西へ行き、そして南へ逃げた。あの山に入ったのを、この目で見た」
男が指差したのは――台山。牛小屋のある、俺たちの命のよりどころだ。
「……あの山を焼く。里人を集めろ。景清を匿えば、この里ごと焼き尽くす。焼き尽くせば……奴も必ず這い出てくる。景清を捕らえた者には褒美を出す」
冷酷な言葉が、氷の刃のように広間に突き刺さる。
「近隣の里の者にも声をかける、……ほら貝の合図で一斉に火をつけろ」
「こっちの里まで火が来たら……困ります」
親父さんが低く言うと、カマキリ男は冷ややかに笑った。
「火道を切ることは許してやる。だが……火を放つのは三日後だ」
その言葉を合図にしたように、四人のうち三人がさっと立ち上がり、広間を出て行った。
動きに一片の無駄もなく、まるで最初から決めていたかのような速度だった。
――おそらく厚東氏や近隣の有力者に命令を伝えに行ったのだろう。
残されたのは一人。
料理屋――本庄が、温かい食事を差し出した。
「どうぞ。お召し上がりください」
だが男は、目もくれずに首を振った。
「いらぬ。我らは人の手に触れたものは食さぬ。役目ゆえに人から恨まれておる……だからこそだ」
ーーその声に、ぞっとした。
そのとき、ハヤテがにやりと笑って、小壺を持ってきた。
「じゃあ……これならどうだ? 醍醐だぞ」
壺の蓋を開けると、甘く芳しい香りがふわりと広間を包んだ。
お母さんの笑顔みたいに優しい匂いに、空気が和らいでいく。
カマキリ顔の男も、一瞬だけ視線を奪われ、喉を鳴らした。
……ごくり、とつばを飲み込んだのがはっきり聞こえた。
だがすぐに目を逸らし、硬い声で言った。
「……いらぬ」
人の温もりにも触れられない――そんな宿命を背負っている。
まだまだ修行中の さとちゃんペッ! です。
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