106話 前世は沖田総司だと雁丸の告白を聞く
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)。
通勤途中で猫を助けようとして命を落とした――その結果、神様から授かったのは「スマホが使える」というチート能力。
転生先は、なんと壇ノ浦で入水する直前の安徳天皇!?
優雅な平安貴族の暮らしを味わいつつ、同時に目にするのは、当時の庶民が背負う悲惨な現実。
「二度目の死だけは、絶対に避けたい!」
ブラック企業よりはマシなこの世界で、俺は未来知識と努力を武器に全力で生き抜いてやる――!
「……すげえ! 雁丸師匠!」
「目にも止まらぬ動きだ!」
ため息まじりの声が広がる。
剣の朝稽古に集まった地頭屋形の家人や里人たちは、
雁丸の剣に目を奪われていた。
――ああ、もっと早く皆を一流にしたいのに、
結局いつも雁丸の剣が目を引いてしまう。
俺も、ハヤテもついつい見てしまうんだけど。
「師匠、こんな技どこで習ったんですか!」
「源平合戦でも、こんな剣は見たことがないぞ!」
ざわつく声。
中にはこんな囁きまで飛び出した。
「鬼の剣? 雁丸は鬼なのか?」
――まずい、このままじゃ物語が「鬼◯の刃」だ。
もう隠しておけないのかもしれない。
雁丸は静かに目を閉じた。
俺はそっと耳元で囁く。
「雁丸、本当のことを皆に話してやれ」
雁丸はうなずき、口を開いた。
「信じるかどうかは任せる。
……だが、俺には前世の記憶がある。
名は――沖田総司。
新選組一番隊組長を任されていた剣士だ」
空気が一瞬にして凍る。
「俺の剣は天然理心流。
江戸・試衛館で学び、
師であり兄であり父のような存在――
近藤勇先生の薫陶を受けた。
先生はただの武芸者じゃない。
義に厚く、仲間を信じ抜く人だった。
俺たち新選組は、
その信念の下に集まり、京の町を守った」
里人はぽかんと口を開けている。
理解が追いついていないようだ。まあ、いい。
すると九郎が遠慮がちに手を上げた。
「師匠は前世でも……そんな、えっと……
その……きれいなお顔だったんですか?
つまり、美少年!」
雁丸は苦笑し、肩をすくめた。
「……美少年?
確かにそう呼ばれることもあったな。
童顔で年下に見られるせいで、
敵に甘く見られることも多かった。
だが、刃を交えればわかったはずだ。
俺の速さは、誰にも止められない」
ざわめきの中、雁丸は静かに剣を構え、
突きの型を一閃して見せた。
「必殺の『三段突き』。
この技は、腕を上げた者には伝えていきたい」
場の空気が震える。
雁丸の声がさらに低く響いた。
「だが俺は病に蝕まれ、
若くして命を落とした。
血を吐き、剣を握れなくなっても、
最後まで前に立つことだけはやめなかった。
近藤先生のために。
新選組のために。
そして、自分の誓いのために。
今、この時代で俺は雁丸として生きている。
沖田総司として果たせなかったものを、
この命で全うするために。
それが転生の意味だと、
俺は信じている」
張り詰めた沈黙の後、
地頭屋形の家人も里人も、一斉に声を上げた。
「おおーっ!」
理解は追いついていなくても、
雁丸のクールな魅力に
すっかり心を奪われていた。
「はいはい、みんな稽古の時間だ!
雁丸師匠みたいになりたいんだろ?
なら手を抜くな、きっと近づける!」
「おう!」
「よし、やってやるぞ!」
皆の掛け声が響く。
雁丸の告白は、里人たちの気合に火をつけたようだった。
まだまだ修行中の さとちゃんペッ! です。
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