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源平合戦で命を落とす安徳天皇に転生した俺、死にたくないので、未来の知識と過剰な努力で、破滅の運命を覆します  作者: さとちゃんペッ!
2章

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104話  新しい仲間たち

ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)。

通勤途中で猫を助けようとして命を落とした――その結果、神様から授かったのは「スマホが使える」というチート能力。


転生先は、なんと壇ノ浦で入水する直前の安徳天皇!?

優雅な平安貴族の暮らしを味わいつつ、同時に目にするのは、当時の庶民が背負う悲惨な現実。


「二度目の死だけは、絶対に避けたい!」

ブラック企業よりはマシなこの世界で、俺は未来知識と努力を武器に全力で生き抜いてやる――!

赤子に沸かした牛乳を届けに、俺はハヤテと雁丸と一緒に土間へ入った。

 赤子は、まだ夢の中。小さな胸がかすかに上下しているのを見ると、それだけで胸があたたかくなる。


「うちは、さえと申します。赤子はあや、女の子なんです」

 若い母親は深々と頭を下げた。

 その目は赤く腫れていて、逃げ続けてきた苦労が一目でわかる。


「逃げ回っているうちに……うちの乳が出なくなってしまって……。あやが目覚めたらすぐに飲ませます。……本当に、本当にありがたい。どうやってお礼をしたらよいか……」


 涙で声が震える。

 俺は、言葉に詰まった。こういう時は――そう、ハヤテだ。

 目だけで合図を送る。


 すぐにハヤテが一歩前へ出て、にかっと笑った。

「お礼なんていいってことよ。親父さんが受け入れたからには、俺たちはひとつの家族だ」


 ハヤテの声はいつも不思議だ。

 聞くだけで、肩の力が抜けるような温かさがある。


「おさえさん、青景の里には牛がたくさんいる。いつか落ち着いたら、牛乳を煮るときに、かき混ぜる手伝いをしてくれたらいい」


「……かき混ぜる、手伝い……?」

 さえさんが目をぱちぱちさせる。


 ハヤテは胸を張った。

「そうだ。美味い醍醐をつくるんだ。里人ならだれでも醍醐を食べられるようにする。長老さんだって、きっと元気になるさ」


 醍醐――その言葉に、場の空気が少しやわらぐ。

 まるで未来の希望をひとさじ、口に運んだかのように。


 雁丸が横で小さく鼻を鳴らした。

「……お前は本当に、よく口が回るな」


 けれど、その口ぶりに咎める響きはなく、むしろ笑っているようだった。

 俺も、思わずうなずいた。


戸の向こうで物音がした。

母親――おさえは、反射的に赤子を強く抱き寄せた。

もしや、また落人狩りが……?

張りつめた空気の中、戸がきしむ音を立てて開いた。


雁丸が刀に手をかけた。


現れたのは、煤と汗にまみれた四つの影だった。

先に逃げ延びてきた、たたら衆の男たち。

彼らは土間に崩れ落ち、顔を地面にこすりつけた。


「……長老。すまねぇ……!」

「俺たち……先に逃げちまった……助けたかった、だが……!」


声は震え、悔恨かいこんに満ちていた。

火の海の中で仲間を置いてきた、その罪の意識が彼らの肩を押し潰しているようだった。


長老は黙して見つめる。

背筋はまっすぐ、しかし瞳の奥に深い影が揺れていた。


やがて、長老は重く口を開いた。

「……いいんだ」


その一言に、四人の肩がびくりと震える。


「生きて戻った。それだけで十分だ。命を絶やせば、火も絶える。……お前たちは、鍛冶の火を繋いだのだ」


おさえが赤子を抱きしめたまま、涙をこぼしてうなずいた。


「……おそらく、まだ山に十人は残っている。あの炎をかいくぐり、どこかに隠れているはずじゃ……」

長老は天井を仰ぎ、深く息を吐いた。

「どうか……どうか無事に、この青景へたどり着いてほしい……」


赤子が小さく伸びをした。

目を開け、辺りを見回すとまた眠りに落ちた。

その寝息だけが、張り詰めた空気をやわらげる。


四人のたたら衆は地に額を押しつけたまま嗚咽し――やがて、互いの肩を抱き合った。

その姿を、俺とハヤテは息を呑んで見守ることしかできなかった。



まだまだ修行中の さとちゃんペッ! です。

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