103話 俺たちの青景にたたらの者たちが身を寄せた 投稿しました
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)。
通勤途中で猫を助けようとして命を落とした――その結果、神様から授かったのは「スマホが使える」というチート能力。
転生先は、なんと壇ノ浦で入水する直前の安徳天皇!?
優雅な平安貴族の暮らしを味わいつつ、同時に目にするのは、当時の庶民が背負う悲惨な現実。
「二度目の死だけは、絶対に避けたい!」
ブラック企業よりはマシなこの世界で、俺は未来知識と努力を武器に全力で生き抜いてやる――!
夕暮れどき。
俺とハヤテは、地頭屋形の広い庭に鉄鉱石を並べて、親父さんに見せていた。
「なんじゃこれは。ただの石を、大事そうに抱えてきおって……」
親父さんは眉をひそめ、怪訝そうに見下ろす。
俺は必死に説明の仕方を考えていた。クロエに教わった「鉄の石」だと信じているけど、どう言えば信じてもらえるのか――。
その時だった。
青景西の門番をしていた里人が、息を切らして庭に駆け込んできた。
「地頭様! お会いしたいという者たちが……!」
親父さんが顔を上げる間もなく、広庭にすすけた一団がよろよろと現れた。
背には幼子を負い、手には壊れたふいごや焦げた鉄の道具。
衣は焼け焦げ、髪は煤で灰色に変わっている。
「何事だ?」
その姿を見て、屋形から出て来た者たちはざわついた。
「おい……あれは……」
「ただの百姓じゃないぞ。あの道具、鍛冶師だ」
俺とハヤテは思わず顔を見合わせた。
――クロエが言っていた《《必要な人材》》って、まさか……!
一団の先頭に立っていたのは、鋭い目をした白髪の長老だった。
歩みはよろよろとしていたが、背筋はまっすぐ。瞳には消えぬ火のような光が宿っていた。
「そなたらは、何者だ?」
親父さん――青景秀通が前に出て問いかける。
長老はゆっくりと膝をつき、深々と頭を下げた。
「我ら……たたら衆。落人狩りに集落を焼かれ、家の者を失い、山へ逃げておりました。だが――鍛冶の火だけは絶やすまいと、ここまで逃げ延びたのです」
その言葉に合わせるように、背負っていた荷をどさりと下ろす。
焦げたふいご、大きな金槌、使い込まれた鉄の道具の数々……。
すすけてはいたが、確かに職人の誇りを宿していた。
俺はごくりと喉を鳴らす。
――鍛冶の火を絶やさぬ。その執念……これこそ、クロエが予告した人材だ。
幼子を負ぶった女は、顔に泥を塗っていた。
「……青景の地頭様、うちらをお助けください。……もう二日も何も食べていません。山の奥を逃げ回っていました。奴らに見つかったら、殺されます。……うちの人は、赤子をかばって……奴らに向かっていき……もう……うっうっ」
続きは聞かなくてもわかる。
ーーひどすぎる。
親父さんはしばらく沈黙していたが、やがて静かに口を開いた。
「お前たちを守ろう。……暮らしが落ち着いたら、この地で我らに力を貸してくれ」
長老は、煤にまみれた顔を上げた。
「……このご恩、……決して決して、忘れませぬ」
すかさず、ミサが親父さんに囁く。
「戦で戻らぬ者たちの家が、いくつも空き家になっております。今夜の寝所には困りません」
俺たちは動いた。
六さんと源さんは荷物を預かり、大切に蔵へと運んだ。
料理屋は、空っぽの胃に優しい食事を作って差し出す。
他の者たちは衣や日用品をかき集め、たたら衆を空き家へ案内した。
――青景の里に、新しい仲間が加わった。
まだまだ修行中の さとちゃんペッ! です。
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