102話 俺たちの青景には鉄鉱石が転がっている
俺とハヤテは、青景の山道を歩いた。
足元に散らばる石ころを見下ろした。
赤茶けた石、黒く重たい石――今までただ蹴飛ばすだけの存在だったのに、クロエの言葉を聞いた途端、金塊に見えてくる。
「お、おい安介! これ、やたら重いぞ!」
ハヤテが両手で持ち上げた石は、ずっしりと腕に食い込むほどの重さだった。
「ほんとだ……ただの石とは思えないな」
俺もひとつ拾い、岩に叩きつけてみる。
カンッ!
金属を打ったような甲高い音。破片が飛び散り、割れた断面が赤黒く光った。
「うおっ……!」
ハヤテが声をあげる。
俺は思わず指でなぞり、粉のように赤い成分がつくのを見つめた。
――これは鉄分だ。昔、資料で見た製鉄の写真を思い出す。
(会社の研修資料で、こんな知識が役に立つ日が来るなんてな……)
心の奥で、苦笑が漏れた。ブラック企業で「無駄知識」だとバカにしたものが、いま俺たちの命をつなぐカギになる。
「なあ安介、これで刀が作れるのか?」
ハヤテが興奮した声で聞いてくる。
「すぐには無理だ。でも……溶かして、鍛えれば――できるかも?」
言いながら、小さな希望を感じた。
仕事に追われて心が擦り切れていた前世では、こんな希望を抱くことなんてなかった。
クロエが尾をしゃらりと揺らした。
「そうニャ。道のりは長いけど、《《鉄》》を手に入れれば、お前たちは本当に強くなれる。
石をただの石と思うな。叩いて確かめ、鉄鉱石を集めるニャ!
ーーそろそろ、必要な人材が来る頃だニャ……」
ここには会社もノルマもない。ただ、自分たちの手で鉄をつくるチャンスがある。
俺は、小さな拳を固く握りしめた。
ーーやってやる……鉄鉱石、100キロ集めてみせる!
「ハヤテ、もっと探そう!」




