101話 俺たちの青景には接触交代鉱床がある!
ブラック企業で過労死寸前だった俺(赤星勇馬)。
通勤途中で猫を助けようとして命を落とした――その結果、神様から授かったのは「スマホが使える」というチート能力。
転生先は、なんと壇ノ浦で入水する直前の安徳天皇!?
優雅な平安貴族の暮らしを味わいつつ、同時に目にするのは、当時の庶民が背負う悲惨な現実。
「二度目の死だけは、絶対に避けたい!」
ブラック企業よりはマシなこの世界で、俺は未来知識と努力を武器に全力で生き抜いてやる――!
黒い毛並みを揺らして、クロエが岩の上にひょいと飛び乗った。
金色の瞳が、夕日の光を反射してギラリと輝く。
「安介――耳の穴をかっぽじってよく聞くニャ!」
しっぽを高く掲げ、得意げにしゃらんと振る。
「ここ、青景の山は、ただの山じゃない。接触交代鉱床ニャ!」
「……接触、交代……鉱床?!」
安介は思わず聞き返した。舌をかみそうな難しい言葉だ。
クロエは胸を張り、まるで教授のように語りだす。
「マグマが地底からぐつぐつ上がってきて、石灰岩の層にぶつかる……。
そのとき、お互いが反応して、新しい鉱物が生まれるんだニャ!
銅、銀、鉄――人の暮らしを変える金属たちが、この“ぶつかり合い”から生まれる!」
「石と石がぶつかるだけで……鉄ができるのか?」
安介の声はかすれていた。
「ぶつかるだけじゃないニャ!」
クロエは岩のかけらを前足でコツンと突く。
「マグマの熱と石灰岩の成分が混じって、まるで料理みたいに“化ける”んだニャ。
赤い鉄鉱石、緑の銅鉱石、きらめく銀鉱石……全部この山の奥に眠っている!」
――眠ってる……?!
クロエはさらに言葉を重ねた。
「奈良の昔には、ここから少し行った長登銅山で銅が掘られて、大仏の修理に使われたんだニャ。
その後も銭の鋳造が続き――江戸の世になると、この青景では柴尾銀山や大谷鉱山が栄えた。
千軒もの家が立ち並び、人でごった返すほどの賑わいニャ!」
――すげえ! ここに、銀山ができるのか……!
クロエはふっと口元を吊り上げた。
「ほら、足元を見てみろ。赤茶けた石、ずっしり重い石……ただの石じゃない、鉄鉱石ニャ。
探せばいくらでも転がっている。
掘り出すのはお前たち自身の手だ。
この地で生き抜くために――鉄を見つけるんだニャ!」
しっぽが高々と空を切り、金色の瞳がぎらりと光った。
まるで未来を見通す神様のように――クロエは、そう告げた。
まだまだ修行中の さとちゃんペッ! です。
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