第8話 検討会。
僕の従姉が余計なことを言ったせいで、僕は相手が何者かも知らないうちに…振られたみたいになってるんだけど??どうなの??
従姉がわざわざ家まで来て、笑いながら話している女の子の名前は、エレオノーレ。
「いい子だよね。剣術の腕もたつしね。」
まあ、辺境伯家の従姉が褒めるぐらいだから、相当なものなんだろう。実際手合わせしたらいい剣筋だった。従姉殿はお茶を飲みながら、くっくっ、と思い出し笑い。
「学院ではAクラスですね。身元も確認いたしましたら、ゲルハルト侯爵家の跡取り娘でした。あの家は限りなく中立ですし、きちんとした領地経営をしています。いいと思いますね。逆に、お坊ちゃまの婿入り先候補に挙がらなかったのが不思議なくらいです。お話を伺っていた伯爵家のご令息との正式な婚約の届け出は出ておりませんでした。」
僕の専属執事と秘書を兼ねているハインツが、調べた資料を手渡してくる。
「婚約者候補の、やればできる男、の家ででも手を回しているんだろう。あちこちで言いふらしているとかな。黙っても侯爵位が手に入るし、付き合いもできる。逃す手はないからな。」
「…話を聞く限り、お相手本人には、何の自覚もないようだがな。」
ハインツが僕たちにお茶を入れてくれながら、機嫌のいいフロレンツィアに話しかける。
「フロレンツィア様がそんなにお気に召す方は珍しゅうございますね。」
「ああ。面白い子なんだ。なにより、そうだな…辛抱強い?」
「いや…あれはもう、いろいろとめんどくさくなっているんじゃないか?」
「ん?」
ハインツが不思議そうな顔をする。そうだよな。
「いや、出来の悪い婚約者候補をひたすら褒めて、いつか、開眼するのではないかと観察しているみたいなんだ。」
「なんですか?それ?」
「だろう?お前もそう思うよな?お相手は伯爵家の三男坊だもの、切り捨てるのも易いのにな。」
「それは…結局惚れてるんじゃないですか?」
ハインツの素朴な疑問に、フロレンツィアが即答する。
「無い、無い、無い!!」
僕も…それはなさそうだと思うな。強いて言えば、興味本位?
しかし、万が一にもお相手の男が蝶とか、蛹に?なったらあの子はどうするんだろうな…。まあ、それこそ僕自身の興味本位だが。
「しかしねえ、お坊ちゃまの長兄の補佐役たるべき次兄が、まさか隣国の姫のところに婿に入ってしまうとは…想定外でしたね。お坊ちゃまの婚約者でいらっしゃいましたのに。」
「・・・・・」
「まあ、いいんじゃないか?もともと2回ぐらいしか会ったことないだろう?クリストフの4つも上だし。次兄が留学したのが運の尽きだったな。大恋愛だったみたいだし。」
「・・・尽き、とかいうのやめてくれる?」
「まあ、長兄の面倒を見ながら、あ、補佐をしながらとなると坊ちゃまの婚約者は限られますね。嫁がしっかり者で屋敷も領地も任せられて、しかも、王都にそれなりの屋敷を構えている家門」
「ぴったりじゃん!!!いいんじゃない?クリストフ。あの子、面白いし。」
「フロレンツィア?まだ会ったばかりで何もわからないでしょう?」
「そうねえ…そういえば…三男坊は嫌なんだってさ。」
「・・・・・」