第7話 悩み事は愚痴をこぼすと良い。
「くくっ、エレオノーレの婚約者殿は、何ともならないやつみたいだな。」
「・・・はあ。」
「良かったら、愚痴くらい聞いてやるぞ?ん?」
「えーーフロレンツィア様の婚約者殿は尊敬できる殿方ですか?」
「あ?うん。そうだな。」
「クリストフ様は?」
「…僕は、まだ決まった方はいない。」
こほん、とフロレンツィア様の隣でクリストフ様が咳き込む。話を振られるとは思っていなかったのだろう。
「私には…小さいころからの婚約者候補がおりまして、もう婚約者面ですが。俺はできないんじゃない、まだ、やらないだけなんだ、やればできるんだ。と言い続けて早10年。いい加減、芋虫から蝶に、せめて蛹ぐらいになったらよかろうと観察を続けているんですが…。」
「ほお。」
「まあ、私は婿取りなので、そうそうは強気にも出れませんので、身なりを整えず、お相手に婚約する気がないと言わせようと思ったりもしたんですが…当の本人は、もう当主にでもなった気らしくて…。私が社交が苦手だから、僕が社交を頑張っているんだ、とかまで言い出す始末で。」
「うっ、くくっ。大変だな?」
「はあ。褒めて育てる、と育児書に書いてありましたので、ひたすら褒めたのが間違いだったでしょうか?」
「育児書??」
「ええ。初めて会ったときはお相手は7歳でしたので。」
「え?その時、エレオノーレは何歳?」
「6歳です。」
ぶはっ、とフロレンツィア様。
あきれ顔でクリストフ様が言う。
「ああ。じゃあお相手は、僕にぞっこんだ、くらいのことは思ってるでしょうね。」
「ええええええ???本当ですか?クリストフ様??」
「ん。多分。いや。確定だな。」
「どうしてそうなるんですか?」
「いや…だって、俺に惚れてるから、何をやっても許されると勘違いされるパターンだろう?」
「そうですか…育て方、間違えましたね。」
フロレンツィア様は転げまくって笑っている。楽しいですか?
こっちはまじなんですけど。
「あはっ、ははっ、ひー。親御さんはなんと?」
「ええ。今のよりいい男がいたら捕まえて来いと。ただ、断るには正当性と合理性がいる、と。」
「ああ。もっともですね。」
「フフッ。じゃあさ、私の従弟がいるんだが、どうだ?真面目なかわいい子だぞ。
家も申し分ない。ちなみに三男だ。」
「・・・・・」
「どうだ?」
「いえ…かわいい三男坊は、ちょっとこりごりなんですが。」