第6話 ストレスは発散するに限る。
「ねえ、エレオノーレ。お昼ご飯一緒に食べてあげようか?」
まあ、アヒム様。わざわざ2年生のCクラスから1年生の教室までお越しいただきありがとうございます。
もう入学して一週間ほどたちますが、私の教室に来たのは初めてですものね。
…と、いうか、私に話しかけてくること自体、初めてでは?
「そうそう、そういえばさ…。」
なんでしょう?妙に小声ですね?
「お前さあ、俺と婚約してるって、言いふらさないでくれよな。学院ぐらい自由にしたいからさ。」
「・・・・・」
めんどくさ。
さて。気を取り直して、お弁当を持ってクラブ室に向かう。
剣術クラブ。
女子は…中等部からの持ち上がりの子たちはもうグループができている。仲良しグループに入る気もないが…。めんどくさい。
入学式の時のクラブの勧誘で入ったここは、お昼休みにクラブハウスを解放してくれるので、初日からお邪魔している。
「エレオノーレ!お茶が出たよ。こっちおいで。」
気さくに声をかけて下さるのは、2年生にして部長を務められているフロレンツィア様。銀髪にグリーンの瞳。北部の方。もりもりと購買部のパンを食べていらっしゃる。
「何自分で用意したみたいないい方してんのさ。」
そう言いながら皆にお茶を出してくださっているのは、同じく2年生の副部長、クリストフ様。黒髪にブルーの瞳に眼鏡。どう見ても文官志望ですか?って感じの人。
そこに、私のほかに1年生3人。大きい子。ひょろっとした子。小さい子。
「今のところ、入部希望者はこの4人だ。実力を見ておきたいので、手合わせするか?」
いいですね。ちょうどストレスが溜まっていたもんですから。
「エレオノーレはマネージャー希望かな?」
クリストフ様、お気遣い無用です。
置いてある模擬刀を一本取って、軽く振ってみる。使い込んであって、手になじみがいい。ヒールがある靴を脱いで、裸足になる。
「いえ。普通に入部希望なんで。」
「じゃあ、誰から行く?」
はい。といって出てきたのは、一年男子の大きい子。
(まったくさ、何が一緒に食べてあげようか?だよ?だいたいね、お前呼びが気に入らないんだよ!)
「お、強いな。はい次。」
ひょろっとした子が、構える。
(大体さ、言いふらす?何を?私の婚約者は誰だか知らない女の子と愛をささやきあっています、とかか?)
「うーーーーーん。なかなか強いね。じゃあ、次。」
ちっちゃい子が構える。
(だいたいさあーはあーーいつになったらやる気出すんだよ?いつだ?大器晩成とか言って、よぼよぼになってからか?)
パーン、と音がしたなあ、と思ったら、3人終わっていた。
「エレオノーレ?雑な思考をしながら、よく剣筋が見えたな?」
フロレンツィア様とクリストフ様が大笑いしているのに気が付く。
あら?声に出てた??