第15話 番外編 そしてそれから。
私のアヒム観察日誌は終了した。
見返してみても、あまり発見もない10年だった。たったの5分で済むことを、引き伸ばしてしまったのは大いに反省した。あそこで、あのタイミングで、クリストフ様にお前も阿呆だ、と言われなかったら、だらだらと結局結婚して…領を食いつぶす阿呆になっていたかもしれない。
たったの5分……人生は変わるものなのね。
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僕は、エレオノーレに惹かれていたが…こんなにも自然に、話が弾む子はいなかったし。話の幅も広かったし、きちんと自分の意見を持った子だった。
もうしばらく様子を見て…アヒムという婚約者ときっぱり別れたら…指輪と花を用意して…などと、僕なりにいろいろ考えていた。ハインツにはせかされたが。
…あまりにもアヒムという男に腹が立って…思わずプロポーズしてしまった。
たったの5分……ああ、もっと時間をかけたかった。
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「え?ハインツ……じゃあ、5分だけ、ね?」
僕が無言で膝をポンポンすると、フロレンツィアが真っ赤な顔でそう言った。
殿下の婿入り先も無事に決まり、両家は顔合わせという名の晩餐会中。
今日はフロレンツィアは珍しくドレスだ。親族の顔合わせに参加していたから。
僕も呼ばれて控えていたが、あとは父が取り仕切ってくれている。
そっと…フロレンツィアが僕の膝に乗る。だーかーらー…ドレス姿で跨ぐな。
5分で済まなくなるぞ?