第12話 腹をくくれ。
「今回の新入生歓迎パーティーも、警備で出ます」
放課後のクラブ活動の終わりに、2年生になったエレオノーレがそう申請して来た。
婚約者がいる者は原則パーティーに出る。去年の学院の行事のすべてにエレオノーレは警備で入った。もちろん、本職の護衛騎士が来るので、その補佐役ではある。
「それはこちらとしては一向に構わないんだけどね、エレオノーレ?」
「はい」
部長のフロレンツィアが、意外なほど真面目な顔で言う。
・・・昨日、ハインツに言い聞かされていたからな。
「あなた…あなたの婚約者候補のことを少し真面目に考えてあげた方がいいね。」
「え?」
「私たち3年生が、まあ、あなたの婚約者者候補も入れてね、卒業するまであと1年もないのよ。」
「…はあ。」
「あなたがめんどくさがって、避けて通っていることで、例えばよ?あなたとその子が結婚できなかったら、残されたその子は…ただの、何の能力もなく、努力もしない、しかも、婿入り先も就職先もない伯爵家のお荷物になり下がるわけよ?」
「……はあ…」
「今なら、まだ何とかなるでしょう?多分…」
「……」
「しかもね…こちらで少し聞いたところによると、あなたの同学年の女の子と、その……」
「?」
傍から見てこちらが恥ずかしくなるくらい、フロレンツィアが赤くなってもじもじしている。
こいつは脳筋だ…色恋にはかなり疎い。この子の婚約者がそのギャップに参っている…
仕方なく本題は僕が切り出した。
「ああ。お前の婚約者候補な、アヒムって言ったっけ?そいつどうも今付き合っている女の子と一線を越えてしまったらしくてな。その女の子が子供ができたと言いまわっているらしいぞ。」
「・・・はあ。そこまで阿呆でしたか…」
「しかもな、その女、自分は侯爵夫人になると言いまわっているらしい。」
「……はあ…付き合う女も阿呆なんですね…」
「そうかもな。でもな、そうさせているお前も、阿呆だぞ。わかっているか?」
「……」
「腹をくくれ。」
「…はい」