第10話 言い得て妙、ってこう使う。
「先輩!」
(しいいいいいいい!!)
クラブの先輩の副部長との遭遇率は高い。行動パターンが似てるんだろうか?
クラブはもちろんだが、図書館の同じ棚の前とか、いつも日向ぼっこしている中庭のベンチとか。
お休みの今日も王立図書館で見かけた。人差し指を口に当て、真顔で黙れと言っている。
(出入り禁止になるよ?静かにね?)
(あ、すみません)
何冊か本を借りて、副部長に誘われて、図書館付属のティ―ルームにお茶を飲みに行く。驚くことに個室が用意された。
今日借りてきた本の話や、クラブの話や…社会情勢まで。
副部長はなかなか勉強家みたいだな。会話が成立する相手と交わす会話は楽しい。
いろいろ話すのに、個室も嬉しい。
こんな風に休日の午後は、副部長とお茶を飲んでいることが多くなった。たまたま、だけどね。
「そういえば…お前は、休日に婚約者と出かけたりしないのか?」
言いえて妙!ってこういう時に使う言葉か?!
「ええ。まあ。学院時代はお互いに好きなことするって感じですかね?」
「へえ。大人なんだな。」
(いや…めんどくさいだけなんですよ。)
「そういう副部長は?」
この方の身分はよくわからないが、お茶を飲むしぐさとか見てると、結構いいところのお坊ちゃまだよね?
「・・・実は…」
なんと!実の兄上が副部長の婚約者と恋に落ちて電撃結婚とな???
それは…すごいな。
真実は小説より奇なり!!本当にあるんだね、そんなこと。
「え、と…何て言ってあげたらいいか…。」
「いいよ。数回かしか会ったことのない婚約者だったしね。ある意味、縁があったのかもね?」
寛大だな…。妻になる予定だった子が義姉になるのも、かなり微妙だと思うけど。
そんなことがあって、副部長には今のところ婚約者はいないらしい。
「そっか。いい方に巡り合えるといいですね。」
「ふふっ。ありがとう。」