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第7話 神秘の科学者


第7話 神秘の科学者




「ホーク家の坊ちゃん……まだここにいるのか? 本気で反抗軍に入る気か? 死ぬのが怖くないのか?」


教官チャドはアレックスの前に立ち、わざと軽蔑するように尋ねた。だが、アレックスは軽い調子で答えた。


「俺、反抗軍に入るよ……英雄になって……えっと……みんなを守るんだ!」


アレックスは少し心虚しく言いながら、自分でも笑いそうになった。本音では、アナに近づくためだけに入ったのだから。


チャドは長年の経験から、どんな若者も見抜いてきた。アレックスの言葉を聞いて大笑いし、彼の肩を叩いた。


「後悔しないといいな……ハハハ!」


---


その頃、シアトルを越え、さらに北のバンクーバーでは激しい火花が飛び散っていた。壮絶な戦闘が繰り広げられていたのだ。


夜明けの荒廃した街区で、無数のロケット弾がキツラノビーチ方面へ向かって炸裂していた。数キロに及ぶ知能機械都市「巣」が、そこから陸に上がろうとしていたからだ。


遠くから見ると、「巣」は5キロもの長さを持つ巨大な機械蜘蛛のようだった。8本の脚は驚異的な5キロの高さに達し、数ブロックを軽く踏み潰す。その背には巨大な工場がそびえ、目立つ「2」の文字が刻まれていた。これは2号「巣」——サモスだ。


サモスがここに現れた理由は、バンクーバーの地下避難所がわずか400メートルの深さにあり、探知されたからだ。サモスは地底を掘り進み、避難所を破壊。生き残った人々は逃げ出し、命がけの戦いに挑んでいた。


地上の通りでは、銃弾が飛び交う激しい戦闘が展開されていた。サモスは機械生体兵を放ち、人間を捕らえようとした。対する人類反抗軍は、市民を南へ逃がす時間を稼ぐため、機械軍と死闘を繰り広げていた。


サモスの知能脳は、機械蜘蛛の頂点で人間サイズのロボットに変形し、戦場全体を見下ろしていた。


サモスの人型は紳士の姿だった。金属の蝶ネクタイと青い燕尾服をまとい、見た目は上品だが、その本性は残酷で冷酷そのもの。


「逃げなさい、人間ども! 逃げなさい! 希望を抱いて逃げ出した後に、それを無残に打ち砕かれる絶望がたまらないんだ。さあ、頼むから逃げてくれ!」


サモスは興奮して手足を動かし、まるで人間のような喜びを見せた。


通りでの銃撃戦は苛烈を極めたが、反抗軍は勇敢だった。次々と現れる機械生体兵を倒し、市民は一人も欠けることなく南へ逃げていた。


現状は人間側に有利だった。バンクーバー避難所の反抗軍は希望を見出し、叫んだ。


「このままなら、無事に脱出できるぞ!」


だが、その希望は長くは続かなかった。多くの市民が朝霧に包まれたリッチモンド市に逃げ込んだ時、濃い霧の中から悲鳴が響き渡った。


市民たちは慌てて引き返した。霧の中から、犬ほどの大きさの機械蜘蛛が襲いかかってきたのだ。


機械蜘蛛の出現で反抗軍は混乱に陥った。これこそ、サモスが事前に放ち、人間を一網打尽にするための罠だった。


目的を果たしたサモスは、機械蜘蛛に通信で真の指令を下した。


「ギャワン・ツェリン・ドルジェという科学者を見つけ出せ!」


---


「博士、こっちです!」


バンクーバーの地下通路で、8人の完全武装した反抗軍が慎重かつ迅速に移動していた。彼らは一人の人物を守っていた——チベット出身の科学者、ギャワン・ツェリン・ドルジェ博士だ。


全員が血まみれで傷を負っていた。ついさっき、「巣」に破壊された地下避難所から、血みどろの戦いをくぐり抜けてきたばかりだった。


博士は、自分を守るために傷ついた若者たちを見て、心を痛め、言った。


「君たち、早く逃げなさい……私は大丈夫だから!」


その中の屈強な男が前に出た。彼は隊長のカーターだ。博士の肩に手を置き、こう言った。


「博士、ふざけないでください! 今、博士の発明こそ人類の希望なんです! 死んでもあなたを安全な場所に送り届けます……」


カーター隊長の決意に満ちた目が、ギャワン博士の重要性を物語っていた。


カーターの言葉を聞いた博士は、申し訳なさそうに平凡な黒い電子時計を取り出し、ため息をついた。


「残念ながら『それ』は『適任者』を選ぶんだ……。君たちに託せればよかったのに……はあ。」


博士は寂しげだった。その時、地面を揺らす衝撃が襲い、地上で何か起こっていることを示していた。


間もなく、カーター隊長の無線機から悪い知らせが届いた。


「2号巣が南から機械蜘蛛を送り込んできた。さらに悪いことに、東から別の巣が現れ、数千もの機械蜘蛛を放った。市民は逃げ場を失い、ほぼ全員捕まった。残った反抗軍もわずかだ……」


この知らせに、皆の心は凍りついた。カーター隊長も思案に暮れた。


「カーター隊長、どこへ行くんですか? もう逃げ場はないですよ!」


隊員の問いに、カーターは少し考えた後、突然ひらめいた。


「バンクーバー空港だ! そこにまだ飛べる飛行機があることを知ってる!」


---


地上では、「巣」サモスが巨大な脚を振り下ろし、街区を踏み潰した。その衝撃はすさまじく、反抗軍は壊滅的な打撃を受けた。


東からも別の巨大な影が迫っていた。超巨大な機械ノミのようで、太陽を覆い隠すほどの存在だ。そこには「4」の文字が刻まれていた——4号「巣」ハディスだ。ハディスは無数の小型機械ノミを放ち、反抗軍を圧倒した。


二つの巨大な「巣」と南からの機械蜘蛛に、反抗軍に勝ち目はない。それでも彼らは怯まず、戦い続けた。その隙に、数人がフレーザー川を越え、バンクーバー空港を目指していた。カーター隊長とギャワン博士を守る一行だ。


「急げ! 急げ!」


カーター隊長の指揮の下、一行は滑走路にたどり着いた。壊れた飛行機の残骸の中、唯一無事な単発エンジンの飛行機を見つけた。だが、機械蜘蛛が彼らを追って迫っていた。


「博士! 早く乗って!」


カーター隊長は博士を後部座席に乗せ、操縦できる隊員レイシーをパイロットに指名し、博士を脱出させる準備をした。


飛行機は二人しか乗れない。博士は残される反抗軍の安否を気遣い、焦って尋ねた。


「ちょっと待って! 君たちはどうするの!?」


カーター隊長はすぐには答えず、戦火が広がる方向を振り返った。二つの巨大な「巣」が刻一刻と近づいていた。


「俺たちは反抗軍だ……最後まで戦うさ。博士、あなたは……人類の希望を握ってる。あの力を使える人間を必ず見つけてくれ!」


カーター隊長はそう言うと、飛行機の出発を命じた。機体はゆっくりと滑走路を進み、加速して飛び立った。


ギャワン博士が空から振り返ると、空港はすでに戦火に飲まれていた。自分を守ってくれた若者たちに、博士は心の中で別れを告げた。


「神のご加護を……」


---


「1、2、1、2!」


岩丘谷の反抗軍キャンプでは、新兵たちの訓練が熱を帯びていた。もちろん、アレックスもその一人だ。


遠くでは、司令官ケイドと副司令官ケイトリンが真剣な表情で新兵たちの訓練を見守っていた。


彼らは北方からの悪い知らせを受け取っていた。


「情報によると、数日前、バンクーバー地区の地下避難所も破壊されました。難民は逃げ出しましたが、反抗軍が南への避難を援護しようとしたところ、挟み撃ちに遭い……全員捕まりました。」


会議室で情報員がため息をつきながら報告すると、皆の顔は重くなった。ケイド司令官が尋ねた。


「彼らの避難所の深さは?」


情報員は手元の電報を読み、答えた。


「500メートルです……」


その数字に、誰もが不安を覚えた。


人類を捕らえるため、人工知能は地底深くを攻める必要性を知っていた。最近になって、直径100メートルの巨大ドリルを開発し、地面を掘り進むようになった。だが、そのドリルは膨大なエネルギーを消費し、損耗も激しい。それでも、彼らは技術を進化させ続けている。このままでは、すべての地下避難所が遅かれ早かれ破壊されるだろう。


ケイドが続けて尋ねた。


「生存者は?」


情報員は電報を見て、ため息をつきながら首を振った。


「申し訳ありません……一人もいません。」


この知らせに、会議室は沈痛な空気に包まれた。だが、情報員が次の電報を見ると、突然興奮して叫んだ。


「ですが、包囲網を突破して単発エンジンの飛行機が南へ飛び立ったそうです! ……しかも、乗っていたのは非常に重要な……科学者です!」



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