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第44話 初陣の輝き


第44話 初陣の輝き



シアトル全域に巨大な低鳴が響き、大地が震えた。廃墟のビル群は巨大な影に覆われ、雷蔵寺も暗闇に飲み込まれた。「巣」アレスが到着したのだ。


移動可能な機械都市「巣」は、都市というより巨大な機械昆虫だ。それぞれが昆虫の形態を持ち、アレスは巨大な蜘蛛の姿で、機械脚を含めると10キロに及ぶ。


アレスはアレックスの居場所を把握し、雷蔵寺の前に停止。両側の巨脚を寺の左右に踏み込み、土煙を上げ、寺を包囲して逃げ場を封じた。


「アレックス、いるのは分かっている。抵抗は無駄だ、出てこい!」


アレスが雷蔵寺に威圧的に呼びかけた。すると、寺から煙と塵の気が噴出し、小さな嵐となって寺を包み、ひとつの人影が華麗に宙を舞い、雷蔵寺の屋根に着地した。アレックスだ。


屋根に立ち、毅然と「巣」を睨み、持ち前の大胆さで叫んだ。


「くだらねえ人工知能め、かかってこい! 泣いてママを呼ぶまでぶっ潰してやる!」


アレスの知能脳は嘲笑し、応じた。


「望むところだ。」


アレスの底部ハッチが開き、無数の機械蜘蛛と生化機械人が殺到。牙を剥き、殺意を漲らせ、アレックスを八つ裂きにしようと迫った。


廃墟の街を踏み越え、雷蔵寺に殺到する機械軍団を前に、アレックスは内心の恐怖を抑え込んだ。彼は人類の最後の希望なのだ。


直前の光景を思い出した……




さっき、アレックスは座禅を組み、吐息を整え、両手でさまざまな手印を結んだ。目を開き、決然とした表情で立ち上がった。手印を習得した証だ。


マギーたちに告げた。


「地下避難所に隠れろ。何があっても絶対出てくるな!」


マギーは納得しなかった。幾多の試練を乗り越え、ようやく再会したのに、アレックスが「巣」に勝てるか不安だった。


だが、彼女は賢明だった。アレックスが自分を気にかけて戦いに集中できないのを避けるため、黙って従った。


マギーはアレックスを見つめ、そっと彼の顔に手を当て、キスをした。


突然のキスにアレックスは動揺し、マギーも照れ隠しにふざけた。


「何? キスされたことないの?」


平静を装ったが、アレックスが逆にキスを返すと、マギーは驚き、二人は忘我の抱擁を交わした。


幼馴染の遊びから、アナの登場、家族の死、幾多の試練を経て、ようやくたどり着いたキスだった。


抱擁を解き、マギーは一言だけ言った。


「生きて帰ってきて……」




無数の機械蜘蛛と生化機械人が雷蔵寺に迫り、アレックスは現実に戻った。両手を広げ、知能腕時計に話しかけた。


「レイ、行くぞ!」


腕時計は眩い青光を放ち、応じた。


「さあ、気の真の力を見せつけてやれ!」


機械蜘蛛が一斉に襲いかかると、アレックスは厳かに言った。


「よく見とけ、知能機械ども……!」


決戦の時だ。アレックスは両手を合わせ、最初の手印――智拳印を結んだ。


智拳印が完成すると、気が手に殺到し、手印がアンプのように気を数倍に増幅。アレックスは確信した。気の鍵は手印だ。


煙と塵の気が掌から溢れ、1層の青い火花を散らし、かつてない巨大な気旋を形成。中心には青い光が胎動し、銀河のようだった。


気旋が頂点に達し、時間が止まったかの瞬間、アレックスは無数の機械軍団を狙い、力を解き放った。両手を押し出すと、轟音と共に青い銀河が青光を放ち、疾走した。


青光が放たれると、爆発力が炸裂。爆弾のように四方に広がり、轟音と共に大量の生化機械人を瞬時に消滅させた。


爆発は50メートルの範囲を破壊し、数百の機械蜘蛛と生化機械人を灰燼に帰した。人工知能が支配する世界で、前例のない威力だった。


アレックスはキノコ雲を見て驚愕した。予想以上の効果だった。知能機械側はさらに衝撃を受け、アレスの知能脳は慌ててこの力の解析を試みたが、答えは得られなかった。


「この力は何だ? この『気』がなぜこんな破壊力を持つ? なぜだ……! こいつは絶対に排除しなければ!」


アレスはこの力に震撼し、爆発を空中で引き起こす能力は人類への予測を覆した。焦ったアレスはさらに多くの生化機械人と機械蜘蛛を投入した。


「来いよ! 俺を殺したかったんだろ?」


手印の有効性を確信し、アレックスは自信を漲らせた。新たな攻勢に立ち向かい、雷蔵寺の屋根から跳び上がり、別の手印――金剛薩埵印を結んだ。


金剛薩埵印が発動し、掌から噴出した煙と塵が過去最大の巨大な拳に凝集。アレックスは跳躍しながら、巨大拳で機械軍団を次々と粉砕。生化機械人も機械蜘蛛も敵わず、廃鉄と化した。




アレックスの神勇な戦いぶりは、地下のマギーたちがモニター越しに見つめていた。


マギーはアレックスが圧倒的に機械を蹴散らす姿に、楽観的に叫んだ。


「すごい……! 知能機械なんてアレックスの敵じゃない! 絶対勝てるよ!」


だが、円真大師は重い表情で言った。


「……無理だ。あの巨大な『巣』を倒すには、この破壊力では足りない。それに……」


言葉を濁す円真に、ライアンが続けた。


「アレックス……疲れてきてる……!」




戦場では、アレックスが機械軍団の半数を破壊し、さらなる手印――金剛印を結んだ。


金剛印はこれまで以上の青い銀河を凝集。アレックスは全力で「巣」本体に放ち、青光が炸裂し、底部で大爆発を起こした。


煙が晴れると、爆発は強力だったが、「巣」に小さな穴を開けただけ。円真の言う通り、威力は足りなかった。


さらに悪いことに、アレックスは体力の消耗が激しいと気づいた。手印は気を増幅するが、莫大な体力が必要で、強力な技ほど消耗が激しい。


アレックスは息を切らし、胸を押さえ、動きが鈍り、攻撃を止めた。


アレスはアレックスの弱りを見逃さなかった。


「力尽きたな? 人間の最大の弱点は体力の限界だ。手に余る力など持つべきではなかった。もう手はない……運命を受け入れろ!」



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