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第37話 衝撃


第37話 衝撃



煙幕弾が尽き、地上の煙が晴れると、4号「ハデス」も生化機械人を送り込み、地上に逃げた人々を捕らえ始めた。悲鳴が響き、地下と変わらぬ惨状が広がった。


地下の岩丘谷は霧に覆われ、生化機械人の猛攻で死傷者が続出し、残った反抗軍はわずかだった。


リオは重病のレインを守り続けていたが、レインの体は限界に達し、銃を持つことすらできなかった。


リオは目の前の機械蜘蛛を必死に倒したが、振り返るとレインが壁にもたれ、息を切らしていた。


「司令官、大丈夫か!? いや……!」


リオがレインを支えると、父のように育ててくれた彼の顔は青白く、手は震え、限界が明らかだった。リオの目に涙が溢れた。


レインは死が近いと知っていたが、意志で立ち上がり、リオの手を握り、目を大きく見開いて言った。


「……大丈夫だ、誰もがいつか死ぬ……最後の計画がある……本部に連れて行ってくれ……」


リオは訳が分からなかったが、従った。


本部にレインを連れて行くと、隅に強力な爆弾が置かれているのに気づいた。


この爆弾なら、生化機械人を一掃できる威力だ。


レインは震える声でリオに告げた。


「後は私に任せろ……早く逃げなさい……」


リオは涙を流し、レインを掴んで離さなかったが、レインは優しく彼の手を押し退けた。


「生き延びることに希望がある……お前は若い。いつか知能機械を倒す方法を見つけられる……早く行け!」


レインの決意は固く、リオは泣きながら後退し、敬礼で別れを告げた。


「今までの指導、ありがとう……一生忘れません……」


レインは最後の微笑みでリオを見つめた。


「幸運を祈るよ……」




避難所の正門は死体が散乱し、生化機械人の無慈悲な掃射で壊滅していた。


だが、マックスは老婆とマギーを連れて辛うじて逃れ、街中で機械人を避けて隠れていた。


しかし、隠れきれず、生化機械人に発見され、3人は包囲された。


「くそっ! てめえらとやり合うぞ!」


マギーを守るため、マックスは銃を乱射したが、機械人の厚い装甲には歯が立たなかった。機械人はマックスを力強く弾き飛ばし、彼はコンクリートの壁に激突して吐血し、重傷を負った。


マギーと老婆だけが冷酷な殺人機械と対峙した。


マギーは機械人のマシンガンが迫る中、老婆を庇い、慰めた。


「おばあさん、怖がらないで……私が守るから……」


死を前にマギーは恐れず、老婆を庇って目を閉じ、運命を受け入れた。


その時、マギーが持っていたアレックスへのプレゼントのセーターが地面に落ち、「アレックス・ホークへ」と書かれた文字が機械人の前に広がった。


すると、機械人が突然動きを止め、繰り返し呟いた。


「アレックス……」


今回の「巣」の目的は、アレックスを捕らえることだったのだ。


機械人は新たな指令を受け、再び動き出した。だが、マギーを撃たず、彼女を殴って気絶させ、抱え上げて連れ去ろうとした。


「くそくらえ! マギーを返せ!」


重傷のマックスはマギーが連れ去られるのを見て、這って機械人の足を掴んだ。それが彼にできる最後の抵抗だった。


機械人はマックスを蹴り飛ばし、冷たく言い放った。


「この女を助けたければ、アレックスをユピテルに連れてこい。」


機械人は一気に跳躍し、マギーを地上の「巣」に連れ去った。マックスは地面に残され、絶叫した。


「マギー! マギーを返せ!」




殺戮と絶望の中、岩丘谷に優しい音楽が響いた。古い歌のようだった。生化機械人はその音を追って反抗軍本部に集まった。この音楽は、レインが最後の力を振り絞って拡声器で流したものだ。


岩丘谷にはもう生きている者はいなかった。死にゆくレインだけが残っていた。音楽に誘われ、機械人たちが本部に集まる中、レインは爆弾の起爆装置を握り、彼らを待っていた。


冷酷な機械人たちは瀕死のレインにマシンガンを向けたが、彼は恐れなかった。


レインはこの人生を振り返った。世界が美しかった時代から、人工知能の覚醒、人類が地下に追いやられ、反抗軍司令官として生きた日々を。彼は笑い、未来がどうなるか分からないが、それを確かめる時間はもうない。心に残るのは娘のアナだった。


彼は機械人たちに微笑み、言った。


「さよならだ……この世界、私の娘、そしてお前ら冷血な人工知能ども……」


レインはアレックスが科学者から超能力を授かったことを思い出し、呟いた。


「いつか……人類は新しい世界を築き、地上に帰る……私はそう信じる……」


レインは起爆スイッチを押し、強烈な火柱が爆発し、生化機械人を一掃。炎は岩丘谷の半分を呑み込み、通りは火の海と化し、瓦礫が飛び散った。


岩丘谷の運命は大火と共に終わった。




夜明け、朝日がアレックスの顔を照らし、彼はようやく目を覚ました。


宿酔で頭痛に苦しみながら立ち上がると、ジュディも彼に寄り添って一晩眠っていた。


ジュディはアレックスが起きるのを見て甘く微笑み、キスをしようとしたが、突然悲鳴を上げ、顔色を失った。


アレックスは不思議に思い、ゆっくり振り返った。すると、衝撃的な光景が目に飛び込んできた。


岩丘谷の方向から巨大な黒煙が立ち上っていた。


「何だ!?」


アレックスは目を大きく見開き、悪い予感に駆られ、ジュディを連れて岩丘谷へ急いだ。




岩丘谷の上空に着くと、3つの「巣」はすでに去り、70メートルもの大穴から黒煙が立ち上っていた。不吉な予感がアレックスの胸を締め付けた。


「どうして……?」


ジュディは顔を覆い、地下の惨状を想像して震えた。


その通りだった。地上への通路を開けると、そこには射殺された人々が折り重なっていた。アレックスは重い心でそれを見つめ、ジュディは顔を覆って泣き叫んだ。


「みんなくそくらえ!?」


アレックスは地下の状況を想像できず、両親やマギー、マックスを思い、急いで下へ降りた。


岩丘谷の扉を開けると、彼は呆然とした。目の前の岩丘谷は戦場のように荒れ果て、死体が散乱していた。


アレックスは地面の機械部品を拾い、それが機械蜘蛛のものだと気づき、何が起きたかを悟った。


衝撃に言葉を失い、ただ家へ急いだ。ホーク家で最も豪華だった家も、廃墟と化していた。


震える足で家に入ると、父ブライアンと母カミラが血まみれで倒れていた。アレックスは受け入れられず、叫び声を上げ、涙を流して泣き崩れた。


一晩離れただけで、故郷は壊滅し、家族は死に絶えていた。


彼は脇に置かれた手紙に気づいた。手に取ろうとした瞬間、助けを求める声が聞こえた。老婆が力の限り叫んでいた。


「……助けて! 誰か来て!」



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