表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/52

第34話 岩丘谷の終焉


第34話 岩丘谷の終焉


「お前は最低だ!」


アレックスは予想外の拳に驚き、隣のジュディは困惑した。この拳を振ったのはマックスだった。


「マックス……どうした?」


普段は内向的で争いを避けるマックスが我慢の限界を超えた。彼はマギーがアレックスを想う気持ちをずっと受け入れてきたが、アレックスがその心を無視する姿に怒りが爆発したのだ。


「分かってんのか……」


マックスはアレックスの胸ぐらを掴み、マギーがどれだけ彼のために努力したかを伝えようとしたが、マギーが叫んで止めた。


「言わないで! 行かせて……」


マックスは眉をひそめ、マギーの決断に心を痛めたが、受け入れるしかなかった。


彼は頭を下げ、何も言わずに立ち去った。もう親友のアレックスに言うことは何もなかった。


親友二人が次々とアレックスに失望したが、酔っ払った彼はそれを気にも留めず、ジュディを連れて岩丘谷避難所の小さな扉から地上へ向かった。




「わあ! あれが星!?」


地上に連れ出されたジュディは、夜空の星を初めて見て興奮した。女の子の気を引こうと、アレックスは言った。


「ほら、銀河がもっとよく見える場所に連れてってやるよ。」


酒のせいで危険を忘れ、知能機械の脅威も頭になかった。アレックスは大胆にもジュディの手を引き、南へ歩いた。やがて廃墟の小镇に着き、家の屋根に登った。


「見て、ここなら視界が開けて、銀河が全部見えるぜ。」


アレックスは酔った勢いで両腕を広げ、得意げに広大な星空をジュディに見せつけた。


ジュディは甘く微笑み、アレックスを喜ばせようと遠慮なく彼の首に腕を回し、熱いキスを交わした。


キスの後、ジュディは何かおかしいと感じ、アレックスをよく見ると、彼はキス中に寝落ちしていた。


せっかくの雰囲気とチャンスを、アレックスは疲れ果てて寝てしまい、ジュディは怒りと笑いの間で呆れた。


「アレックスったら……」


ジュディはどうやっても彼を起こせず、仕方なく一人で生まれて初めて見る銀河を眺めた。美しい銀河だったが、彼女は知らなかった。恐ろしい災厄が迫っていることを……。




「ブー! ブー! ブー!」


岩丘谷に警報が鳴り響いた。機械移動都市「巣」が来たのだ。


「早く! 早く! 電源を全部切れ!」


岩丘谷は大混乱に陥り、住民たちは眠りから覚めて急いで電源を切った。


避難所は一瞬で真っ暗になり、皆が恐怖に震えながら声を出さず、いつものように「巣」が通り過ぎるのを祈った。


地上500メートル、岩丘谷の上空では、夜空が徐々に遮られていた。3つの巨大な「巣」、合計十数キロメートルの規模が、機械の虫脚を動かし、ついに避難所の真上に来た。


地下の住民たちは振動で「巣」の到来を感じ、発見されないよう祈った。


だが、今回は違った。「巣」は岩丘谷を狙ってやって来たのだ。


3つの「巣」には大きな数字が記されていた。3号「メデューサ」、4号「ハデス」、8号「ミカエル」。


3つの「巣」が虫脚で立ち止まり、中央の3号「メデューサ」が底部を開き、60メートルの巨大なドリルが轟音と共に地面に伸びた。その光景は恐怖そのものだった。


さらに恐ろしいことに、ドリルが回転を始め、地面は土煙に包まれた。「巣」が掘り始めたのだ。




「大変だ! 掘ってる! 俺たちが見つかった!」


天井の激しい振動で、岩丘谷の全員が最悪の事態を悟った。知能機械がとうとう岩丘谷を攻撃しに来たのだ。


もう隠れる時ではない。電源が一斉に点けられ、岩丘谷は驚叫と混乱に包まれた。


リオは即座に反抗軍を集め、装備と武器を準備させた。装備管理のマックスも急いで駆けつけ、隊員の装備を整えた。


病床のレイン司令官もこの日が来ることを知っていた。彼は瀕死の体を起こし、揺れる天井を見上げ、静かに呟いた。


「来るべきものが来た……この老いぼれの体で、岩丘谷のために最後まで戦うよ……」


ジョイや元第6小隊のメンバーたちも急いで装備を整えた。かつてない恐怖の中、震えながら準備した。


シェリーは震えながらブレンダに言った。


「どうしよう、ブレンダ……怖いよ。前回の地上任務よりずっと怖い……」


そこへ教官のチャドが現れ、未曾有の危機にもかかわらず、彼らを励ました。


「怖がるな、子供たち。ここで終わりじゃない。殺人マシンが侵入してきたら、全力で倒す。もし敵わなくても、住民を連れて地上に逃げて隠れるんだ。絶対に生き延びられる!」


チャドの言葉に皆が顔を見合わせ、恐怖が薄れ、手を重ねて互いを鼓舞した。




アレックスを逃がして以来、アナは一言も発せず、落ち込んで部屋に閉じこもっていた。だが、知能機械が岩丘谷を襲う今、沈んでいる場合ではない。彼女は気持ちを切り替え、完全武装し、武器を準備して故郷を守る覚悟を決めた。


アナは鋭い目で部屋を出、まず重病の父レインを安全な場所へ移そうとした。だが、医務室に入ると、死に瀕した父が装備を整え、銃を持って立っているのに驚愕した。


「お父さん! 何してるの!?」


アナが困惑して尋ねると、レインは震える手で彼女の顔を撫で、言った。


「死にゆくこの身でも、岩丘谷のために最後まで戦うよ……いい子だ、テラバンカーでしっかり生きてくれ……」


アナは父の言葉に戸惑ったが、考える暇もなく、レインがスプレーを彼女の顔に吹きかけ、アナは気を失った。すぐさま誰かが彼女を支えた。


レオナルドだった。彼は重傷を負っていたが、屈強な若者だ。この緊急事態で、彼はプランBを実行する――アナを連れてテラバンカーに戻るのだ。


レインは重々しくレオナルドに言った。


「君たちが傷ついたのは私の予想外だった……ただの父親として、娘が生き延びてほしいだけだ。今、岩丘谷の滅亡は避けられない……娘をテラバンカーに連れて行ってくれ。」


レオナルドの背後にテラバンカーの反抗軍が現れ、アナを受け取った。彼は複雑な表情でレインに尋ねた。


「実は、反抗軍が知能機械に勝てるとは最初から信じてなかったんだろ? だから最悪の事態に備えて、私にアナを連れ出すよう頼んだんだな?」


レインは微笑んで答えた。


「司令官として、岩丘谷の住民全員に責任がある。だが、娘は違う。彼女は生き延びるべきだ……早く連れて行ってくれ!」


レオナルドは父親としてのレインの思いを理解し、敬意を込めて頷き、言った。


「幸運を祈る。」


レオナルドはすぐさま去った。


レインは外の混乱と揺れる天井を見つめ、死を目前にしても毅然と言った。


「かかってこい、機械ども……!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ