第31話 アレックスとリオの目的
第31話 アレックスとリオの目的
「リオが戻ってきた!」
反抗軍の隊員が慌ててレイン司令官の病室に飛び込み、報告した。以前、リオがレインに詰め寄った際の不穏なやり取りを思えば、英雄と称されたリオが今、皆を震撼させる存在になっていた。
「レイン、出てこい!」
案の定、リオは反抗軍キャンプに現れ、施設を次々と破壊しながら叫んだ。他の反抗軍でさえ、彼を慕う者たちも手出しできなかった。
「娘を売り飛ばす老いぼれめ! アナをよそ者に嫁がせるのはまだしも……俺は我慢したが、司令官の座まで譲るなんて、絶対に認めねえ!」
リオは破壊を続けながら喚き、病床のレインにもその声が届いた。
「はぁ……」
レインは深いため息をついた。彼はリオを岩丘谷の次期司令官として育ててきたが、岩丘谷の反抗軍の規模や装備では、いずれ襲来する知能機械に対抗できない。テラバンカーとの同盟は苦渋の決断だった。
「車椅子で連れていって、彼に本当のことを話すよ……」
レインはリオに自分の病状を明かそうとしたが、アナが即座に止めた。
「お父さん、そんな必要ないわ。病気のことはまだ誰にも知られるべきじゃない。私に任せて。」
キャンプでは、岩丘谷の反抗軍がリオの周りに集まり、彼の呼びかけに耳を傾けていた。
「兄弟たち、腹が立たないのか? どこぞの傲慢な大尉が突然やってきて、お前らの司令官になるなんて、納得できるか? 高慢ちきなテラバンカーの精鋭たちがお前らの居場所を奪ってるのに、黙ってていいのか?」
リオの扇動的な言葉に、反抗軍は彼の側に立ち、感情を煽られて叫んだ。
「その通り! ふざけるな! レオナルドを司令官になんかさせねえ! 岩丘谷から出てけ!」
勢いは止まらず、ついにキャンプ全体がリオに扇動され、彼を先頭に本部を包囲し、スローガンを叫んだ。
「レオナルドはいらねえ!」
リオの真意は不明だが、彼は見事にレオナルドを本部から引きずり出すことに成功した。
レオナルドは厳しい目でリオを睨み、苛立ちを抑えて問いただした。
「ふん……お前があのリオ・オーストか。何を企んでる?」
リオは恐れることなく前に進み、すべてを奪った男を睨み返し、薄笑いを浮かべて言った。
「企むも何も! お前が出てくるのを待ってただけだ。」
レオナルドが一瞬驚いた瞬間、リオは突然銃を取り出し、空に向けて発砲した。
「バン!」
銃声が岩丘谷全体に響き、住民を震撼させた。アナやケイトリンが様子を見に出て、チャドやジョイたち第6小隊の面々、マックスも銃声に気づいた。
岩丘谷の奥にいるマギーもその音を聞いた。
「はぁ……やっぱり止められなかった……」
彼女はため息をつき、何か大きなことが起きる合図だと悟った。
「何を企んでる!?」
レオナルドがリオを問いただしたが、時すでに遅し。花火が流星のように岩丘谷の街を駆け上がり、空で炸裂し、皆が驚いて外へ出てきた。すると、アレックスが反抗軍キャンプ前の家の屋根に立ち、拡声器で叫んだ。
「レオなんちゃら、お前らのテラバンカーの反抗軍、めっちゃ弱えな! この若様一人も捕まえられないで、知能機械と戦えるのかよ!?」
アレックスは遠くからレオナルドと視線を交わし、親指を下に突き出す挑発的なジェスチャーをした。レオナルドは苛立ったが、今はアレックスを捕まえ、科学者の遺物を奪うことが最優先だった。
「ふん……自ら出てきてくれて助かった。いいか、全員、今すぐ奴を捕まえろ!」
レオナルドが笛を吹き、哨戒中のテラバンカー反抗軍が一斉にキャンプへ殺到した。
アレックスは反抗軍が集まるのを見て薄笑いを浮かべた。これこそ彼の狙いだった。
「来いよ! 俺を捕まえてみろ!」
アレックスは挑発しながら屋根の上を素早く移動し、テラバンカーの反抗軍を引き連れて走った。だが、岩丘谷の反抗軍は動かなかった。
リオの扇動により、岩丘谷の反抗軍は冷ややかに見物するだけだった。
「アレックスを捕まえるなら、お前らテラバンカーだけでやれ。レオナルドの命令なんざ聞かねえ。」
リオはレオナルドの前でそう言い放った。レオナルドは腹立たしかったが、リオと揉める暇はなかった。銃を手にリオを睨み、言い放った。
「科学者の秘密を手に入れたら、お前、今みたいに笑ってられるかな……?」
レオナルドはリオの肩をわざとぶつけて去ったが、リオは意に介さず、遠ざかる彼の背中を見て呟いた。
「ふん……お前こそ、もうチャンスはねえよ……」
アレックスは気を使って屋根から屋根へと素早く跳び、わざと立ち止まって叫んだ。
「バーカ、俺を捕まえてみろよ!」
テラバンカーの精鋭たちはアレックスに振り回され、あっちへこっちへと走らされた。アレックスは彼らを最終目的地――岩丘谷の正門前の広場へと誘導していた。
彼はそこに特別な「贈り物」を用意していたのだ。
ついに、アレックスは最後の跳躍で、広場中央に黒い布で覆われた巨大な物体の上に着地した。
アレックスはその上に立ち、自信に満ちた目で周囲を見渡した。テラバンカーの反抗軍300人以上が広場に集まり、彼を層状に包囲した。
そこへ、レオナルドが銃を手に到着し、アレックスと対峙した。
チャドや第6小隊のメンバーたちはこの騒ぎを聞きつけ、急いで駆けつけたが、途中でリオに阻まれた。
「なんで通してくれねえんだ?」
ブレンダが不満げにリオに問うと、彼は淡々と答えた。
「お前らの安全のためだ。」
ゴードンが疑わしげに冗談めかして言った。
「安全? まさかアレックスがなんか大技でも出すってか?」
黙っていたチャドはゴードンの言葉を聞き、広場の方を心配そうに見つめ、呟いた。
「バカな子……早くやめるんだ……!」
広場では、反抗軍がアレックスを幾重にも包囲し、レオナルドが銃を手にゆっくりと前に進んだ。彼は籠の鳥を捕まえるかのように、自信満々にアレックスに言った。
「お前のその超能力も、完全武装の彼らには通用しない。さっさと諦めて、科学者から受け取ったものを渡せ。」
レオナルドの軽蔑的な言葉は事実だった。アレックスの初級の気では、精鋭たちに効果は薄い。
だが、アレックスは逆に自信満々の笑みを浮かべ、ゆっくりと言った。
「本気で……次の攻撃が無効だと思うか?」




