第3話 会議
第3話 会議
「ウーーッ、ウーーッ、ウーーッ」
アレックスはこの音を聞くと、なぜか笑みを浮かべて言った。
「よし、反抗軍が帰ってきた! 行って見てみようぜ!」
そう言うと、アレックスはマギーが何か言おうとしていたことに気づかず、さっさと秘密の花園を離れ、上へと向かった。
取り残されたマギーは、がっかりした表情で小さくため息をつき、自分を笑った。
「私って、本当にバカ……」
岩丘谷は細長い地下河谷で、両側には住居がひしめき合い、全長2キロ、高低差100メートルに及ぶ。その最も高い場所に、避難所の入口があった。
今、川の起点近くにある重厚な金属製の扉が、警報音とともに開いた。点滅する黄色い警告灯の下、百人を超える完全武装の者たちが凛々しく入ってくる。彼らはまさに人類反抗軍——英雄そのものだった。
人類が地下に逃れて以来、各地の生き残りは反抗軍を組織し、知能機械の大軍に立ち向かってきた。反抗軍は各避難所の訓練キャンプで育ち、抵抗の使命を背負うだけでなく、機械軍が地下に侵入した際の最後の防衛線でもあった。だからこそ、皆は彼らを英雄と讃えた。
反抗軍が地上での任務に出るたび、それは数日間にわたる戦闘や偵察任務だった。毎回、帰還する人数が減る可能性があった。だから、彼らが戻るたびに、市民たちは地下の入口に集まり、英雄たちを迎えた。
「英雄たち、お疲れ様!」
入口の両側には歓迎する市民がひしめき、拍手と歓声が響いた。反抗軍のメンバーたちは次々と入ってくるが、熱狂的な歓迎にもかかわらず、彼らの表情は重かった。疲れ果て、厳粛な顔つきで、せいぜい無理やり笑顔を浮かべる程度だ。生死をかけた戦いをくぐり抜けてきたのだから。
38歳ほどの軍服姿の女性が、すでに前方で待っていた。彼女はケイトリン・ソーレン、岩丘谷の副司令官だ。彼女は帰還した一人に歩み寄り、声をかけた。
「ケイド司令官、おかえりなさい。今回の状況はどうでした?」
ケイトリンは反抗軍の司令官、ケイド・レインを迎えに来たのだ。
司令官らしいケイドは、どんなに疲れていても、どんなに心配事があってもそれを表に出さず、苦笑いしながら答えた。
「まあ、まあだ……。みんなを休ませてくれ。後で会議を開く。」
ケイトリンはその言葉から、今回の任務が順調ではなかったことを察し、それ以上は聞かず、彼に続いた。
歓迎の列はまだ終わっていなかったが、人ごみの中から二つの顔が現れた。アレックスとマギーだ。
アレックスは期待に満ちた目で帰還する反抗軍を見ていた。まるで誰かを待っているかのように。一方、マギーはこの場が好きではなく、仕方なく両腕を胸の前で組み、唇を尖らせてぼーっとしていた。
その時、一人の反抗軍の登場に群衆がざわついた。彼は岩丘谷の英雄とされ、女性たちからはアイドル視される存在だった。
彼の名は——リオ・オースト。
リオ・オーストは27歳。だが、若くして大胆不敵で、数々の地上戦に参加し、多くの機械生体兵を倒してきた。背が高く、男らしい雰囲気にあふれ、端正な顔立ちは正義感そのものだった。多くの人が彼を次期反抗軍司令官と見なし、明日を担う星と呼ぶのも過言ではなかった。
リオはアレックスとは正反対の存在で、群衆からの人気も彼を上回っていた。リオが現れるたび、アレックスは少しだけ劣等感を覚えた。なにしろ、アレックスは裕福な家柄とハンサムな顔を除けば、ごく普通の青年にすぎなかったから。
リオの登場に、アレックスは背を向けた。
やがて、最後の一団が帰還した。アレックスは待っていた人物を見つけたように、嬉しそうに手を振って叫んだ。
「よお! 女英雄!」
そう、最後に入ってきた反抗軍には数人の女性メンバーがいた。傷を負っている者もいたが、みな自信と誇りに満ち、その傷を勲章のように掲げていた。特にその中の一人、金髪で長身、鋭い目つきの女性は、果敢で高潔な美貌の持ち主だった。彼女こそ——アナ・レイン。
アナはケイド司令官の娘で、幼い頃から厳しい訓練を受け、射撃や戦闘技術に秀でていた。美しく、颯爽とした彼女は男女問わず憧れの的だった。多くの者が彼女に言い寄ったが、彼女は誰にも心を許さなかった。
おそらく、彼女を射止めるには、大英雄でなければならないのだろう。
アレックスがわざわざやってきたのは、もちろん彼女に会うためだ。実際、アレックスも岩丘谷では有名なイケメンで、家族が多くの工場を運営し、市民の生活を支えているため、女性からの人気も高かった。
「やあ、アナ、ようやく帰ってきたな!」
アレックスは人ごみをかき分けてアナに並び、話しかけた。しかし、アナは冷ややかに答えた。
「アレックス坊ちゃん、他にやることはないの?」
アレックスは笑いながらついていく。
「もちろんあるさ! 家族の工場を巡回するんで忙しいんだ。でも、女英雄の君を迎えるチャンスを逃すわけにはいかないだろ? なあ、今夜のキャンプファイヤーパーティーで一緒に一杯どうだ?」
こんな誘いはアナにとって何千回も聞いてきた軽薄な言葉で、笑いものだった。彼女は足を止め、アレックスに向き直った。
「坊ちゃん、気持ちはありがたく受け取るわ。」
アナは軽い軽蔑の笑みを浮かべ、会話を終わらせ、仲間とともに歩き去った。アレックスのことなど眼中になかった。
仕方ない。アナにとってアレックスは、ただの1歳年下の遊び人だ。まともに相手にする価値もないと思っていた。
だが、アレックスの面の皮はそう薄くはない。アナが去るのを見送りながら、軽くため息をついただけだった。
「またフラれたね! そんな女たらし、相手にされるわけないじゃん! さっさと諦めなよ!」
今度はマギーが得意げにアレックスの横にやってきて、からかった。まるで彼のナンパ失敗を心から楽しんでいるようだった。
アレックスは気にするだろうか?
いや、彼は振り返り、マギーに笑いながら言った。
「なあ、賭けようぜ。いつか絶対にアナを落としてみせるからな!」
夜、岩丘谷の広場は明かりに照らされ、市民たちが集まっていた。反抗軍の帰還を祝う恒例のパーティーだ。この時ばかりは、岩丘谷の住民にとって貴重な楽しいひとときだった。
広場の中央では、アイルランド音楽のバイオリンが響き、陽気な雰囲気に皆がキャンプファイヤーを囲んで踊り出した。岩丘谷で醸造された酒を飲み、自家製のベジタリアンバーベキューを頬張り、拍手喝采が響く。なんとも賑やかな光景だ。
楽しいひとときのはずだが、誰もが心からくつろげるわけではなかった。広場から少し下ったところにある反抗軍基地では、高い司令塔の中で、重要な会議が開かれていた。
会議には、今回の任務に参加しなかった留守番の小隊長たちが集まっていた。司令官ケイドは会議テーブルの地図を指し、厳粛な表情で地上での戦闘と偵察の状況を説明した。
「数日前、我々は8番目の『巣』を追ってバンクーバー北部へ向かった。そこで、ある避難所が巣に見つかったことを知った。残念ながら、巣は地表300メートルの地下を掘り進み、浅い避難所を攻撃できるようになっていた……」
この報告に、出席した小隊長たちは驚愕し、顔を見合わせ、ざわめきが広がった。
「つまり……その避難所は、もう……」
その中の一人、知的でメガネをかけたクリスという小隊長が、驚きながら尋ねた。
ケイドは皆の不安を煽りたくなかったが、隠すこともできず、目を閉じてため息をつき、答えた。
「その通り……全滅だ。」
勇敢な反抗軍のメンバーたちも、この恐ろしいニュースには動揺を隠せなかった。最近数ヶ月、機械生体軍はこれまで以上に積極的に人類を捕らえ、巨大な移動都市「巣」は地下探査や掘削能力を強化していた。このままでは、いつか岩丘谷も見つかってしまう……。
「はあ……どうすればいいんだ。所詮、俺たちは人工知能には勝てない。人間は滅亡する運命なのか……」
小隊長たちが絶望的なため息をつき、会議の空気が重くなる中、ケイド司令官が突然声を上げた。
「いや、必ずしも希望がないわけではない。」
その言葉に、全員の視線が集まり、ため息が止まった。皆、ケイドが何を言うのか知りたがった。
ケイドは一人一人を見回しながら言った。
「我々がその避難所で機械軍の襲撃を受けた後、瀕死の男を見つけた。彼は言った。最近、機械軍が地下の避難所を急襲しているのは、ある人物を探しているからだと。その人物は科学者で、機械軍に対抗する手段を研究したという。」
ケイドの言葉に、小隊長たちの目に希望の光が宿り、気合いが入った。
「本当か! それが本当なら……世界を取り戻せるぞ!」
他の者たちが意気込む中、これまで黙っていた副司令官ケイトリンが冷静に尋ねた。
「その話、本当だと確認できたの? その科学者をどうやって見つけるつもり?」
全員の視線が再びケイドに集まった。ケイドは答えた。
「確証はない……。だが、俺は希望を捨てて死を待つより、それが本当だと信じて動きたい。」
そう言うと、ケイドは何かを決意したように立ち上がり、力強く宣言した。
「だから、できるだけ早くこの科学者を見つけるため、反抗軍のメンバーをさらに募集する!」
広場では、楽しげな雰囲気が最高潮に達していた。反抗軍基地の者たちもほとんどが広場で祝宴に参加していたが、一人の若者は装備庫に残り、反抗軍の壊れた装備を一人で修理していた。
彼の名はマックス。反抗軍の後方支援要員だ。正規メンバーになるのが夢だが、90キロの体重がネックで、どの隊長も彼を受け入れるのをためらった。地上で素早い機械生体と戦うには、動けない者は足手まといになる。だから、彼を予備要員にしておくのは彼のためでもあった。
マックスは広場から聞こえる陽気なアイルランド音楽に興味を示さず、銃のストラップの修理に没頭していた。だが、すぐに誰かが彼を邪魔した。
「うわっ! 愛すべきマックスは何やってるんだ?」
このふざけた口調に、マックスはすぐに相手が誰かわかり、白目をむいて答えた。
「やめろよ……この女たらしの若旦那。パーティーが盛り上がってるんだから、そっちに行けばいいだろ、アレックス!」
そう、邪魔したのはアレックスだった。アレックスは笑いながら、適当に銃を手に取り、弄びながら言った。
「おいおい! お前のたった二人の親友として、放っておけないだろ。こんなとこで毎日過ごしてたら、退屈で死んじゃうぜ?」
内向的なマックスは慌ててメガネを押し上げ、首を振った。
「俺……行きたくない。ああいう賑やかな場所は俺に合わないんだ。お前が行けばいいよ……」
アレックスはつまらなそうに唇を尖らせ、大げさに声を張り上げた。
「ほら、誰かさんが仲間外れになりたがってるぞ!」
すると、別の不満げな声が響いた。
「誰が仲間外れになるって? なんでそんなつまんないこと言うの!?」
マックスが振り返ると、そこには見知った顔——マギーがいた。彼は驚いて口をあんぐり開けた。
そう、アレックス、マギー、マックスは三人とも幼馴染で、最高の親友だった。
これは不思議なことではない。彼らは子供の頃から一緒に遊び、アレックスは女好きで軽薄だが、裕福な家柄を鼻にかけず、二人を対等に扱った。
マギーの登場に、マックスの態度は一変し、はにかんだ笑みを浮かべて言った。
「マギーも行くのか……なら、早く言ってくれよ……」
マックスのマギーへの微妙な態度は、アレックスも気づいていたが、あえて何も言わず、二人の肩を叩いて豪快に言った。
「その意気だ! 行くぞ、行くぞ! スコットランドダンスを見に行こうぜ!」
こうして、マックスは仕事を放り出し、半ば強引に広場へ連れていかれた。
広場では、燃えるキャンプファイヤーとバイオリンのスコットランド音楽に合わせ、市民や反抗軍の男女がペアになって踊っていた。なんとも楽しげな雰囲気だ。
アレックスはマギーとマックスを連れて広場にやってきた。群衆の楽しそうな様子を見て、彼の遊び心が疼いた。彼は突然マギーに振り返り、言った。
「よし、マギー! 一緒に踊ろうぜ!」